労働時間の算定が難しい場合に一定時間働いたとみなす「みなし労働時間制」の適用は不当だとして、外国人技能実習生の指導員だった熊本市の女性(41)が元勤務先に未払いの残業代支払いを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(今崎幸彦裁判長)は16日、みなし労働時間制の適用を不当だと認めた2審・福岡高裁判決(2022年11月)を破棄し、審理を高裁に差し戻した。
労働基準法は、会社の外で仕事をした労働者に、みなし労働時間制を適用して雇用者側が賃金を支払うことを認めている。
1、2審判決によると、原告の女性は16~18年に技能実習生の監理団体で、実習生の受け入れ先の訪問や、実習生の送迎、生活指導をしていた。1審・熊本地裁判決(22年5月)は、監理団体に提出された業務日報に、ある程度正確な女性の労働時間が記載されていたとし、みなし労働時間制の適用は不当と判断。監理団体に約29万円の支払いを命じ、2審も支持した。
これに対して小法廷は、女性が自ら具体的なスケジュールを管理し、自らの判断で直行直帰することも許されていたとして、監理団体が女性の勤務状況を具体的に把握するのは簡単ではなかったと指摘。2審は業務日報の正確性について検討が不十分だったとして、さらに審理をすべきだと述べた。
林道晴裁判官は補足意見で、在宅勤務やテレワークを含めて会社外での働き方は多様化しており、雇用者側が労働者の勤務状況を具体的に把握するのが困難と言えるかの判断は難しくなっていると言及。「裁判所は個々の事例ごとに具体的な事情に的確に着目した上で判断していく必要がある」と述べた。【巽賢司】
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