1957年に建てられた現在の下大湯共同浴場。開湯400年ののぼりを手にする伊藤和幸代表=山形県上山市で2024年6月5日午前11時39分、竹内幹撮影
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 山形県上山市のかみのやま温泉、下大湯共同浴場が今年で開湯400年を迎え、記念イベントとして「400時間無料入浴」を27日まで開催中だ。市内外から多く人が足を運び、思い思いにくつろいでいる。

 共同浴場は江戸時代の1624年(寛永元年)に上山一帯を治めた領主、松平重忠が「町かこい湯」として庶民向けに開設。当地に流刑となった沢庵(たくあん)和尚も入浴したとも伝えられている。

 清潔に保たれた浴室の壁には上山城や蔵王が描かれる。長辺7メートル、短辺4メートルの浴槽は、源泉掛け流しの温泉が44度前後に保たれた「熱め」と41度前後の「ぬるめ」に仕切られている。

 イベントは2日にスタート。浴場を運営する組合の伊藤和幸代表(71)は「今はコミュニケーションの場が少なくなっている。風呂の中ではみんな裸。年齢の差や社会的な地位も全く関係ない。すべての人が平等に会話ができる場。400年前の人も同じ気持ちではなかったのではないかと思う」と話す。

「あったまるよ」。温泉につかり笑顔を見せる常連の鈴木憲助さん=山形県上山市の下大湯共同浴場で2024年6月5日午前11時53分、竹内幹撮影
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 「赤ん坊の頃から母ちゃんに連れられて来てたよ」と話す上山市の鈴木憲助さん(81)は湯上がり後、「昔は家に風呂がなかったから、みんな共同浴場に来ていた。もう生活の一部、落ち着くよ。ここは憩いの場。相撲の結果について話したり、みんなでたわいのない話をしたりしているよ」と笑顔で語った。

 伊藤代表は「ここには湯があるだけ。体がきれいになれば、心もきれいになる。魅力ある共同浴場を守っていきたい。これから100年、400年続けていくためにも、若い人や新しい人も来て、交流してほしい」と願う。

 無料期間は27日午前10時まで。シャワーを使う場合は洗髪料として100円が必要となる。営業時間は午前6時~午後10時。【竹内幹】

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