[リポート’24 与那原発]
沖縄県与那原町立与那原中学校が生徒の答案を画像AI(人工知能)で一部自動採点するシステムを導入して4年目に入った。教職員の残業が問題化する中、教員の一人が民間のシステムをインターネットで見つけ、「働き方改革」の一環として同町教育委員会に提案し、採用された。採点時間を大幅に短縮できているだけでなく、採点・集計ミスを防ぐ効果も。設問ごとにクラス平均点や学年平均点を把握でき、生徒が復習に活用したり、教員の指導改善にもつながっている。 (南部報道部・平島夏実)
システムは、シンプルエデュケーション(東京)が開発した「百問繚乱(りょうらん)」。同社によると6月3日現在、同町を含めて県内6市町村の19中学校が採用している。与那原中学校は2021年度に試験導入し、22年度からは町教育委員会が毎年13万2千円の予算を組んで導入している。同中学校の生徒は約680人。中間テストや期末テストがない代わりに毎週2回、何らかの教科で単元テストがある。学習の達成度を小まめに確認する意味合いがあり、学習習慣が「一夜漬け」にならないようにする狙いもある。
その分、教員は日常的に採点業務を抱える。
■各自工夫の限界
全ての答案用紙に◯×を付け終わった後に集計作業を集中的に行ったり、大問ごとに採点・集計したり、答案用紙1枚ごとに全ての設問の採点と集計を完結させるなど、教員一人一人が自分のやりやすい方法で工夫していた。
だが、×の答えが続いた後に◯を×にしてしまったり、記述式解答の採点にばらつきが出てしまったりと、ヒューマンエラーがどうしても出ていた。
■フィードバック
採点支援システムの導入を提案した英語教諭の嘉陽大知(だいち)さん(39)は、システム導入で、採点時間が従来の4分の1に減った。これまでは60~70問程度のテストを4クラス分(約140人分)採点するのに約6時間かかっていたが、システムにより約1時間半に削減できたという。
百問繚乱は、答案用紙をスキャンすると、設問ごとに全員分の回答がパソコン画面上に並べて表示される。どんな間違いが多いかは一目瞭然。画面上で採点すると、各設問の正答率、全体の平均点、学年順位などが自動算出される。
採点した用紙を各生徒に画面上で返却すると「みんなが解けているこの問題、自分もできていて良かった」などの反応がある。
教員側は「この設問の正答率が低かったのは授業での説明が分かりにくかったせいかも」などと反省し、指導法の改善を考えるようになったという。
嘉陽教諭は「システムを使ってテスト結果をパワーポイントでフィードバックする教員も出てきた。教員側が教え方を研究できるようになったのは大きなメリット」と話す。
町教育委員会は今後も、学校現場からの提案を積極的に検討する考えだ。
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