ヒゲナガエビ=2024年5月16日午後5時18分、梅山崇撮影

 鹿児島県南さつま市で、地元で取れる特産品「ヒゲナガエビ」をモチーフにした巨大像をつくる市の計画を巡り、賛否が渦巻いている。市議会で「拙速」「リピーターが来るのか」などと指摘が続出。関係予算は成立したが、付帯決議も採択される事態となった。果たして、モニュメントのエビでタイならぬ観光客を呼び込めるのか。

 ヒゲナガエビは体長約10センチで、日本からオーストラリアにかけた海域の水深300~600メートルの深海に生息する。名前にヒゲとある通り、長い触角を持ち、鹿児島では「タカエビ」と呼ばれる。刺し身や天ぷらで食卓に上るほか、丸ごと焼いて乾燥させ、だしとしても重宝される。

鹿児島県南さつま市のエビ像設置予定地

 市民に身近なこのエビを観光に活用するアイデアが浮上したのは2023年秋のことだ。市の南西部にある野間半島の一部で、約30年の歳月を費やした国道226号の一部区間(約5・4キロ)の24年2月開通が決まり、市は海を望む幹線道をてこに、誘客を図るため目玉づくりが必要と考えた。

 市は、見た目のインパクトがある、特産物のヒゲナガエビを模した全長約7メートル、高さ約3メートル、繊維強化プラスチック(FRP)製の像を計画。設計製作費3500万円を盛り込んだ24年度一般会計当初予算案をまとめ、2月の市議会定例会に提案した。費用のうち半分は、海に親しむブルーツーリズムや農林水産業者の多角経営化を支援する県の半島振興の制度を活用した。

 これに対し、市議会の予算特別委員会などでは疑問の声が噴出した。エビ像の設置を計画する場所の周辺には飲食店がほとんどなく、どう観光振興に活用するのかが不透明だったためで、市議は「地元が要望したわけでもなく唐突」「『映(ば)える』写真を撮りに一度は来ても、リピートする人がいるだろうか」と市側を追及した。

 市幹部は「像をつくって終わり、というわけではなくブルーツーリズムの推進事業を進める」と説明を重ねた。その後、予算は市議会の賛成多数で可決されたものの、エビ像計画に関して「多面的視点から更なる検討を重ねること」と市側に求める付帯決議が全会一致で採択される異例の展開をたどった。

 現時点で市は像のイメージ図を示しておらず、計画に肯定的な市議も「税金の無駄遣いに終わらせないようにしてほしい」と気をもむ。市はエビ像を24年度中に製作し、25年度には公開したい考えだ。

 エビ像にこだわる市の念頭にあるのは、イカの巨大モニュメントで話題を呼んだ「先進地」の成功例だ。安留敏史・市商工水産課長は「計画が固まった段階で地元にはきちんと説明したい」と話した。

「イカキング」を参考に作られるエビ像。どんなモニュメントになる?

 そのイカの巨大モニュメントとは――。【梅山崇】

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