回答した組合員3万3133人のうち半数近くがカスハラ被害にあったとの調査結果を報告するUAゼンセンの松浦勝治・政策政治局長(左から2人目)=東京都千代田区で2024年6月5日午後2時11分、奥山はるな撮影

 顧客による迷惑行為である「カスタマーハラスメント(カスハラ)」について、小売業やサービス業の従業員らで組織する労働組合のUAゼンセンは5日、組合員を対象としたアンケート結果を公表した。直近2年間で被害に遭った人は回答者の46・8%に上った。自由記述では「ぶっ殺すぞと怒鳴られた」など、深刻な被害の事例が寄せられた。

 UAゼンセンは小売業やサービス業の185万人が加盟する産業別労働組合。2017年に初めての調査を行い、カスハラ被害が認知されるきっかけとなった。今回は今年1~3月に調査を実施し、3万3133人から回答があった。

 「最も印象に残っている迷惑行為」を尋ねたところ、被害の種類で最も多かったのは暴言(39・8%)。実例としては「女のくせに」と暴言を受けた上で再来店時に木刀を持ってこられたり、客にデザートを運ぼうと声をかけると「うるせえ、てめえぶっ殺すぞ」と怒鳴られたりした。

 2番目に多かったのは威嚇・脅迫(14・7%)で「『歯を食いしばれ』と言われ、殴ろうとしたり、車でひこうとしてきたりした」という事例もあった。同じ内容を繰り返すクレーム(13・8%)、長時間拘束(11・1%)、権威的態度(10・2%)と続いた。「動画を撮られ、警察を呼んで対応したが、心当たりのない中傷をネット上に掲載された」などネット上の被害も0・8%あった。

 加害者の性別は70・6%が男性だった。年齢は40代以上とみられる人が全体の9割以上で、中でも50代と60代がそれぞれ約3割を占めた。

 対応した時間は「1時間以内」が62・7%だったが、それ以上の時間を要したケースも40%近くあった。

 被害に遭った人の割合は20年の前回調査の56・7%からは低下した。20年6月に施行された改正労働施策総合推進法の指針に、カスハラの相談体制の整備や被害者への配慮が「望ましい」と盛りこまれるなど、啓発が進んだのが背景とUAゼンセンはみている。

 雇用主などの対策は「特にない」が42・2%で、前回調査からほぼ横ばいだった。厚生労働省は、カスハラから従業員を守るため、企業に相談体制の整備や被害者への配慮を義務づける法整備を検討している。【奥山はるな】

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