法曹界初の女性トップとしての決意を語る渕上玲子氏=東京都千代田区(岩崎叶汰撮影)

約4万5千人の弁護士が登録する日本弁護士連合会(日弁連)で、設立75年目にして初の女性会長が誕生した。1日に就任した渕上玲子会長(69)は、被災地での法律相談や裁判のIT化対応などに精力的に取り組んできた。法曹三者(弁護士、検察官、裁判官)で初の女性トップとして「この景色を変えていきたい」と話す。

法曹を目指すきっかけは、5歳で経験した家庭裁判所の手続きだった。両親は名前を「玲子」と決めていたが、役所の窓口で「その漢字は届け出できない」と誤って案内され、出生届の記載は「冷子」になっていた。

改名を申し立てた家裁で、裁判官に「あなたの名前を書いてみて」と促されて「玲子」と書くと、変更が認められた。漠然と裁判官へのあこがれを抱くようになったという。

周りに法曹関係者はおらず、両親は大学を出ていなかったが、法曹への挑戦を応援してくれた。司法試験に合格した昭和55年は、合格者のうち女性が1割程度。司法修習では同期の男性が早くから進路を決める中、就職口が見つからずショックを受けたが、受け入れてくれた事務所で経験を積み、6年目で独立した。

女性初のトップに就任した今、「日弁連が取り組むべき人権問題」の一つとして、被災者支援を挙げる。

平成7年の阪神大震災で、神戸の弁護士会は震災9日後に法律相談を開始。渕上氏も東京から応援に駆け付けた。各地で夜遅くまで相談に乗る弁護士の姿に「被災者に情報を提供し、安心感を与える大切さを感じた」という。

23年の東日本大震災では、電話相談体制整備に尽力。法改正にも取り組み、大規模災害で日本司法支援センター(法テラス)が無料で法律相談できる仕組みを実現した。将来は「日弁連を核に被災地の弁護士会を支えることが重要」と話す。

「IT化の実現」も、重点課題の一つとする。

新型コロナウイルス禍では裁判期日が多数取り消され、日弁連事務総長として対応に奔走。令和7年度中に民事訴訟が全面IT化される見通しで、弁護士らの研修などを通じて「市民が裁判を受ける権利が守られるようにしたい」と話す。

いま、弁護士のうち女性は2割を超えた。会長就任には「予想以上に反響があった」とし、「日弁連の男女共同参画を体現する存在として職務に取り組みたい」と抱負を語った。(滝口亜希)

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