旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強いられたのは憲法違反として、共に聴覚障害のある福岡市の夫妻が国に計4400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は30日、旧法を違憲と判断し、国に計1644万円の賠償を命じた。上田洋幸裁判長は、不法行為から20年経過すると請求ができなくなる「除斥期間」の適用は「著しく正義・公平の理念に反する」と指摘した。
同種訴訟は全国12の地裁・支部に起こされ、賠償を命じる判決が出たのは地高裁を合わせて12件目。
原告は朝倉典子さん(82)=仮名=と、提訴後の2021年に83歳で亡くなった夫の彰さん=同。
彰さんは結婚直前の67年10月ごろに説明もなく病院に連れていかれて不妊手術を受けさせられたとし、子どもを持つことができない人生を強いられたとして提訴した。
彰さんが手術を受けたことを示す証拠がなく、裁判では旧法に基づく不妊手術の有無が争われたが、判決は「重大なプライバシーについて虚偽の内容を述べ、公にすることは考えがたい」と述べ、手術を受けたと認めた。
旧法については「差別的な思想に基づくもので正当性を欠く上、極めて非人道的」と指摘し、個人の尊重を定めた憲法13条や法の下の平等を定めた同14条1項に違反していると認定。旧法を立法した国会議員に過失があったとして賠償を命じた。
判決後に記者会見を開いた原告の朝倉さんは手話で「判決を聞き終わり、ほっとして涙があふれた。夫に報告したい。国には謝罪を求めたい」と話した。【山口桂子】
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