沖縄県内の狂犬病の予防注射接種率が低迷している。県が29日に発表した2023年度の速報値は前年度比マイナス0・2ポイントの52・2%だった。22年度は52・4%で全国平均の70・9%を大きく下回り、少なくとも8年連続で全国ワースト。23年度の全国平均はまだ公表されていないが、県内で改善傾向が見られないことからワーストを更新する可能性が高い。(社会部・下里潤)

 23年度の県内市町村ごとの接種率は、南大東村が100%で最も高く、北大東村85・7%、多良間村83・1%と続き、離島町村が上位を占めた。最低は本部町の25・9%だった。

 世界保健機関(WHO)の勧告では、狂犬病のまん延防止には接種率70%以上が必要とされている。県内では名護市や今帰仁村、嘉手納町など32市町村がこの基準を満たしておらず、万が一、狂犬病が発生した場合、まん延阻止が難しい状況だ。

 狂犬病予防法に基づき、犬を飼っている人は年に1回の予防接種が義務付けられている。例年、4~6月は狂犬病予防注射月間で、各市町村で犬の集合注射が行われている。ただ、県内には狂犬病は過去の病気だと思い込む人も多いとみられ、接種率は例年50%前後と低迷している。

 県薬務生活衛生課は「狂犬病が人に感染して発症すると、致死率はほぼ100%。世界では毎年5万5千人が犠牲になっているという推計もある。飼い主としての責任感を持ち、この機会に予防接種をお願いしたい」と呼びかけた。

 国内では1956年を最後に犬の狂犬病の発生はないが、2020年に外国で犬にかまれて帰国後に発症した患者の事例がある。13年には台湾でも発症が確認された他、沖縄は米軍物資などから小動物にウイルスが紛れ込んで入ってくる可能性もあり、同課は「常に侵入の脅威にさらされている」と説明する。

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