判決後、記者会見する死刑囚側の代理人を務めた植田豊弁護士(左端)ら=大阪市北区で2024年4月15日午後3時38分、土田暁彦撮影

 死刑執行を当日に告知される現在の運用は憲法に反するとして、確定死刑囚2人が執行に従う義務がないことの確認や計2200万円の損害賠償を国に求めた訴訟の判決で、大阪地裁は15日、いずれも請求を退けた。横田典子裁判長は当日の告知について「死刑囚の心情の安定や円滑な執行のために一定の合理性がある」と述べた。憲法判断は示さなかった。

 告知時期について法令上の規定はなく、法務省の運用に基づいて実施されている。現在は執行直前とされているが、1970年代半ばまでは前日までに告知があったという。死刑囚側は直前の告知では不服申し立ての機会がなく、「適正な手続きがなければ刑罰を科されない」とする憲法31条に反すると主張していた。

 判決はまず、当日告知の執行に従う義務がないとする訴えについて、現状の執行方法を前提としている刑事裁判で争うべきだと指摘した。死刑囚の立場について「現行の運用で執行を甘受すべき義務を負っている」と判断。憲法31条などに照らしても、執行を受け入れなくて済む立場や利益について導くことはできないとした。

 この訴訟で、国側は前日に告知された死刑囚が自殺したことを受け、当日告知の運用に改めた経緯を明らかにした。判決はこれを踏まえ、執行を受ける死刑囚の心情安定や円滑な執行、刑事施設の秩序維持などの観点から「一定の合理性を有すると認められる」と結論付けた。

 死刑囚側の代理人を務めた弁護団の植田豊弁護士は判決後の記者会見で、「国は死刑に関する情報を出さず、裁判所も明らかにするよう求めなかった。肩すかしのような判決で、逃げずに判断してほしかった」と話した。法務省は「主張が受け入れられた」とのコメントを出した。【土田暁彦】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。