骨太の方針を話し合う経済財政諮問会議が23日に開かれた。同会議に出席した民間議員から、「高齢者の定義」について、65歳から5歳延ばすべきとの提言がなされ、にわかに注目を集めている。岸田総理は会議で、「男女、若者、高齢者を問わず、誰もが希望に応じて、働き続けられるように」と発言し、人口減少の中で、働き手をいかに増やすか意見交換が行われた。この「高齢者の定義」がトレンドワード=ネット上の話題の言葉となった。この提言を巡り、立憲民主党の小沢一郎衆院議員は24日、「高齢者の定義」に言及し、「年金は80歳からなどと言い出しかねない」と自身のSNS「X」で皮肉り、政府の議論に疑問を呈した。

日本の公的年金制度は2階建ての設計がなされており、日本に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する1階部分の「国民年金」、会社員・公務員などが加入する2階部分の「厚生年金」。この年金制度全体の中で、国民年金に加入する自営業者や学生などは、「第1号被保険者」。国民年金と厚生年金に加入する会社員や公務員などは「第2号被保険者」となる。そして、第2号被保険者に扶養される配偶者は、国民年金に加入する「第3号被保険者」と区分される。

年金受給の厳しい現実が伝えられる。最新の2024年度では、前年の物価上昇率が3.2%に対して、年金支給額は前年度から2.7%増に抑えられた。従って、支給額は増加するが、実質的には目減りとなった。物価上昇率に引き上げが追い付いて行かなかった背景には、「マクロ経済スライド」という仕組みの発動があった。「マクロ経済スライド」とは、働き手が減る中で、将来にわたって年金制度を維持するため、財源の範囲内に給付水準を収める仕組みとなる。

厚生労働省が5年に1度、年金財政の持続性を確認する「財政検証」が実施される。検証対象は、国民年金の納付期間延長、在職老齢年金の見直しなどの5項目。今夏、検証結果が公表され、年末までには、年金制度改正案がまとめられ、来年1月の通常国会で制度改正の関連法案が提出される見通しだ。23日の経済財政諮問会議で、経団連の十倉雅和会長は、「被用者保険の適用拡大、年収の壁対応により、第3号被保険者の縮小を図る」と提言した。13日に開催された厚生労働省の年金部会では出席した委員から、「労働力不足の中で、専業主婦を前提とする制度は時代に似合わない」、「厚生年金の適用を進めて、縮小を加速すべき」などの声とともに、「3号制度を廃止する上で働きたくても育児介護で働けない人への配慮は必要」といったから様々な意見が出された。

★ゲスト:田中秀明(明治大学公共政策大学院教授)、加谷珪一(経済評論家)
★アンカー:木内登英(野村総合研究所エグゼクティブエコノミスト)

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