著名人の画像や名前を無断で使用した悪質な詐欺広告による被害が深刻化している問題で、自民党は24日、広告の取り締まり強化を求める提言案をまとめた。ネット交流サービス(SNS)を運営するプラットフォーム事業者に対し、事前審査の厳格化や広告削除の申請に適切に対応する体制の整備などを緊急要請するよう、政府に求めた。
提言では、これまでの事業者側の対応が「十分ではない。『犯罪ほう助を行っている』と言っても過言ではない」と批判。緊急対策として、SNS事業者には、利用者が知人以外と友達関係を結ぶ場合に警告表示を出すことや、広告の発信者の本人確認をする手法の確立を求めた。また、金融商品取引法の内閣府令を改正し、本人に無許可で著名人の名前などを広告に掲載することを禁止する内容も盛り込んだ。
欧州連合(EU)では、オンライン上の違法コンテンツの排除を巨大IT企業に義務付ける「デジタルサービス法(DSA)」が制定され、従わない場合は制裁金などが科される。日本では情報流通プラットフォーム対処法が成立したが、広告の透明性確保の観点などは条文にないため、施行状況を踏まえ、さらなる法整備も視野に検討する。
議論を主導してきた対策検討チーム座長の平井卓也・元デジタル相は会合の冒頭で、「消費者を窮地に追い込むような広告を制限できるようにしたい。国民に関心を持ってもらうことで被害が減る」と述べた。党内手続きを進め、来週中にも岸田文雄首相に提出する予定。
SNS型の投資詐欺による被害額は今年1~3月、前年同期比7倍超の219億円と急増している。自民党では4月以降、広告塔として被害にあった実業家の前沢友作さんや、フェイスブックやインスタグラムを運営する米メタなどへの意見聴取を重ねてきた。【藤渕志保】
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