神戸市須磨区で1997年に起きた連続児童殺傷事件で、小学6年だった土師(はせ)淳さん(当時11歳)が殺害されてから24日で27年になる。父守さん(68)が報道各社に手記を寄せ、「子供への思いは、どれほどの時間が経過しても変わるものではない」と心境をつづった。
加害男性からの手紙は2018年から届いておらず、守さんは手記で「私たち遺族の思いに応える努力をしてほしい」と訴えた。加害者による「償い」について、各社の取材に「被害者、被害者遺族が『償い』であると感じて初めて償いと言える」との考えを示した。
兵庫県は23年4月に犯罪被害者らの権利を守る条例を施行し、24年4月からは被害者や遺族に見舞金を支給する制度の運用も始まった。守さんは、県内でも市町単位では支援制度の内容に差があると指摘し「どの地域でも同じレベルの支援を受けることができるようにしてほしい」と求めた。
また、警察庁が24年4月、犯罪被害者の遺族に支払う給付金の最低額を引き上げる方針を決めたことにも触れ、守さんは「損害賠償金の国による立て替えなどの支援策は残されたまま」などと、さらなる充実を訴えた。【木山友里亜】
土師守さんの手記(全文)
私たちの次男の淳が亡くなってから今年で27年という年月が経過しました。子供への思いは、どれほどの時間が経過しても変わるものではないと思います。
加害男性からの接触は、現時点では手紙を含めてありません。私たちは、次男がなぜ、加害男性に命を奪われなければいけなかったのかという問いについて、私たちが納得するような回答を求め続けています。手紙を書くことも含め、私たち遺族の思いに応える努力をしてほしいと思います。
兵庫県で犯罪被害者等支援条例が施行されてから1年がたちました。昨年は犯罪被害者等総合相談窓口が開設され、本年度からは見舞金の支給制度が開始されました。見舞金支給制度を制定している都道府県はわずかで、兵庫県が見舞金制度を制定したことで、被害者支援がさらに進展するものと思います。しかしながら、対応すべき問題はまだ多く残っています。例えば、私が以前から話していますように被害に遭った少年に対する支援は、教育含め全く不十分な状況です。また兵庫県では、県に条例が制定される前に県内の全ての市町に犯罪被害者支援条例が制定されましたが、制定された時期もさまざまで、内容についてもかなり差があります。そのため、県内のどの市町で犯罪被害者・遺族になったかにより受けることができる支援に差があるのが実情です。県が中心となって、どの地域においても同じレベルの支援を受けることができるようすること、そして支援内容のさらなる改善を継続的に行ってほしいと思います。
国における犯罪被害者支援については、昨年6月に犯罪被害者等施策推進会議が開かれ、被害者や遺族に国が支給する給付金額を大幅に引き上げる方針を政府が決定しました。この決定に基づいて警察庁に有識者検討委員会が設置され議論されてきました。そして犯罪の被害者や遺族に支払われる国の給付金の見直し案がまとまり、給付金の最低額が引き上げられると4月25日に報道されました。しかしながら、「新全国犯罪被害者の会(新あすの会)」が求めていた損害賠償金の国による立て替えなどの支援策は残されたままになりました。「新あすの会」としては、国が一元的に犯罪被害者支援を担うためにも、北欧で設立されているような「犯罪被害者庁」設立の必要性を訴えており、実現を望んでいます。
犯罪被害は誰でも遭う可能性があります。一般の方々の理解がすすみ、犯罪被害者を取り巻く環境がさらに改善するように願っています。
令和6年5月24日 土師守
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