茨城県警は23日、妊娠約9カ月で堕胎したなどとして、スリランカ国籍の留学生、ルバシン・リヤナゲ・ウデシカ・アヨミ・ジャヤラトゥ(30)=同県取手市取手1=と交際相手で同国籍のムナシンガ・スデス・ディルシャン・デ・ソーサ(30)=宇都宮市峰3=の両容疑者をそれぞれ堕胎と同ほう助の容疑で逮捕したと発表した。
「ITを学びたい」と語っていたジャヤラトゥ容疑者。捜査関係者が、出産直後の子の死体遺棄と比べ「あまり触れたことのない犯罪」と語る堕胎容疑をかけられるまでに、何があったのか――。
通っていた取手市内の日本語学校や関係者によると、容疑者は母国でIT関係の資格を取得し、2023年4月に2年の予定で入学。学校側が整備する寮に入居していた。
この1カ月ほど「体調を崩した」と言うことはあったが、20日まで通常通りに通学。その前の週には6月までの授業料を支払ったばかりだった。学生間で妊娠を疑ううわさもあった一方で、元ルームメートの女性が「胃腸の具合が悪い」と否定していたという。
学校によると、過去に妊娠・出産した学生の中には帰国した人もいる半面、母国の家族に子供を預けて留学を続けた人もいる。一方、県内で外国籍住民の就労や就学を支援してきた「茨城NPOセンター・コモンズ」の横田能洋代表理事は、就学状況で在留資格が左右される不安定な立場が事件につながった可能性を指摘する。
技能実習生らが自宅で出産後、死体遺棄容疑で逮捕される事件は過去にも起きているが、留学生も出産・育児に伴い欠席が続いたり成績が悪化したりした場合、「留学目的を果たしていないとして在留資格が更新されないことがある」と横田さん。入管制度で留学生が「出産すると想定されておらず、帰国を恐れて医療にアクセスしにくい」と話す。
支援制度もあるが、多言語で分かりやすい資料が県内ではないという。「行政が制度を早めに周知し、学校なども留学生らが困った時にサポートできる体制を作ることが大切だ」と指摘した。【斉藤瞳、西夏生】
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