消費者庁などが入る中央合同庁舎4号館=東京都千代田区で、松本惇撮影

 小林製薬(大阪市)の「紅こうじ」を含むサプリメントの健康被害問題を受け、消費者庁は機能性表示食品制度の見直しに向け、週内にも専門家による検討会の初会合を開く方針だ。小林製薬は健康被害情報を把握しながら国に速やかに報告しなかったなどの課題が明らかになっており、報告ルールの整備を中心に検討する。消費者庁は5月末をめどにまとめたい考えだ。

 他に検討課題になるのは、消費者への情報提供の方法や機能性表示食品の製造販売過程における安全性の確保など。週1~2回のペースで開く検討会には、大学教授や医療関係者らが名を連ね、消費者団体や事業者にヒアリングする方針だ。

 消費者庁は機能性表示食品6795製品を緊急点検し、18製品で計117件(速報値)の健康被害情報が寄せられたが、製品を販売した11事業者は緊急点検があるまで報告していなかった。機能性表示食品の届け出に関するガイドラインでは、被害情報を把握した場合は速やかに報告するよう求めているが、報告は義務ではなく罰則などはない。

静岡県立大の梅垣敬三客員教授=本人提供

 機能性表示食品制度は安倍晋三元首相の成長戦略「アベノミクス」の一つとして創設された経緯がある。静岡県立大の梅垣敬三客員教授(食品安全学)は、「米国の制度を参考に、規制緩和対策として導入され、多様な商品の参入をもたらした」と意義を説明する。

 一方で、小林製薬が国に健康被害情報を報告したのは、最初の症例を把握してから2カ月以上経過した後だった。梅垣氏は「医療機関から寄せられた重篤な事例は1件でもすぐに国に報告すべきだった。米国の制度では、重篤な健康被害の情報を入手してから15日以内の報告を義務付けている」と提案し、制度見直しの必要性に言及した。

 審査のあり方にも課題があるとする。機能性表示食品の安全性の確認は代表的な成分のみだが、商品化の過程で他の成分も含まれることがあるという。梅垣氏は「有害物質が含まれていなくても、体質によってはアレルギー症状などが出る場合がある。特定保健用食品(トクホ)のように商品全体で安全性を評価すべきだ」と指摘する。【阿部絢美、垂水友里香】

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