北陸新幹線の福井県内開業に合わせて「ハピラインふくい」がJRから北陸線を引き継ぎました。特急を持たない並行在来線のハピラインふくいは、利用者数の維持に懸念も持たれていましたが、利用者数は順調に推移しているようです。
一方で、「混雑」が問題となる想定外の事態も…。なぜこのような事態が生まれているのか、取材しました。
7日午後5時半ごろ、混雑する列車に次々と人々が乗り込んでいきます。都市部ではよくある通勤通学の風景ですが、ハピラインふくいの福井駅でも、平日の夕方を中心に福井から敦賀に向かう普通列車で、これまで見られなかった混雑が発生しています。あまりの混雑ぶりに、電車に乗れない人も出ています。
ハピラインふくい利用者:
「混んでいて乗ったらキツそうだなと思ったので乗らなかった」
「次の電車を待って、それに乗ろうかなと」
「JR時代はそんなに混んでなかったんですけど。こんなに混むものなのかと思いました」
車が交通手段の主役である県内では、これまであまり見られなかった普通列車の混雑。ではなぜ、ハピラインになってから混雑することになったのでしょうか?
ハピラインふくい・小川俊昭社長:
「平日の夕方は、JRに比べ便数や車両数も多くなっているが、課題となっている17時39分の列車は2両編成となっていて、この列車が非常に混み合っている」
通勤・通学のラッシュアワーにあたる平日の午後5時から7時台の列車は、ハピラインになってから増便しているものの、便によってはJR時代は4両編成だったものが2両編成に車両数が減ったものもあり、これが混雑の原因だとしています。一方で、こんな嬉しい誤算も…
ハピラインふくい・小川俊昭社長:
「サンダーバード、しらさぎの利用者が全て新幹線に転移されるかなと思っていたが、当社を利用してもらっている。ハピラインの方が時間はかからず料金も安い」
実は、速くて安いハピラインふくい。所要時間を運転距離で割った「表定速度」は快速列車で約時速85キロメートルと、特急料金のかからない列車では全国でもトップクラス。電車好きの間では「爆走快速」と呼ばれることも…
ハピラインふくい・小川俊昭社長:
「線路の等級としては非常に安定した基盤で、走行性においては全国トップレベル。一番良いくらいの線区だと持っている」
福井から敦賀までの所要時間は、新幹線の20分前後に対してハピラインは50分程度。約30分の時間差がありますが、その分、料金は新幹線の半額以下です。さらに朝晩に運行される快速列車に乗れば、時間差はわずか20分に縮まります。この割安感がハピラインが選ばれる理由というわけです。
事実、利用者数は開業以降好調に推移していて、3月の1日あたりの利用者は目標とする2万人を大きく上回る2万3000人。4月の数字は現在精査中とのことですが、2万人のハードルは超えそうだとしています。
まずは好調なスタートを切ったハピラインふくい。混雑への対応について小川社長は、「平日夕方の非常に混雑している車両については、2両から4両に臨時増結するなど柔軟に考えながら、より快適なサービスを提供できるように前向きに考えたい」としています。
すでに5月から一部の日で車両を2両から4両に増やす臨時の対応を取っていて、状況によっては6月以降も継続するとしています。
ハピラインふくいは32両の車両を保有していますが、そのうち1両はラッピング作業のため常に稼働できない状況。全車両のラッピングが終わる夏以降は増便、増結の頻度を上がるなどさらに柔軟な対応が取れるとのことです。
ハピラインふくいの運営にあたっては、県や沿線市町から10年間で70億円を補填する計画となっていて、これはつまり、10年間で70億円の赤字が出る想定ということ。利用者の増加でこの赤字幅が減れば、さらなる設備投資やサービス向上につなげられる可能性もあります。県民だけでなく、福井を訪た人にも繰り返し使いたいと思われるよう、魅力的な鉄道になるよう対応が求められています。
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