■経営危機 廃止相次ぐ「ローカル線」
3月末、北海道のJR根室線にある富良野ー新得間が117年の歴史に幕を下ろしました。沿線には「北の国から」や映画「鉄道員(ぽっぽや)」などのロケ地になった駅があり観光客にも親しまれてきました。
富良野市在住の方
「地元から鉄道がなくなるというのは寂しい気がします」
人口減少、マイカー利用の増加など全国で“ローカル線の廃止”が相次いでいます。
2000年以降、46路線の区間、距離にしておよそ1193kmが廃止に。
“ローカル線の危機”が叫ばれるなか、奇跡的な復活を遂げた鉄道が茨城県にあるんです。
■つり革に“干し芋”!?V字回復の裏に何が?
ABCテレビ 増田紗織アナウンサー
「お客さんがずらりと座っていますね」
人口約15万人のひたちなか市を走る「ひたちなか海浜鉄道湊線」。
ABCテレビ 増田紗織アナウンサー
「一面に田園風景が広がっています。こうやって列車に乗ることでしか楽しめない景色もありますよね」
勝田ー阿字ケ浦間の全11駅を走る湊線は1913年から運行する歴史ある鉄道です。
1965年、年間およそ350万人いた利用者は2005年にはおよそ70万人にまで減少。赤字が続き廃止が検討されていましたが存続を願う住民らの声が広がり2008年、ひたちなか海浜鉄道として再出発したのです。
千葉から来た観光客
「普段見たことない景色みながら乗るのも楽しいかなって」
「景色とかきれい」
廃止の危機を救ったのが吉田千秋社長。
富山県にあるローカル線の危機を救った手腕が評価され2008年、社長に就任。減り続けていた利用者を取り戻すべく観光客を呼び込む“イベント列車”を企画します。
ひたちなか海浜鉄道株式会社 吉田千秋社長
「ビア列車っていうのをやりましたらやっぱり普段乗ってない人がすごく楽しいということで」
車両を貸し切り、ビールは飲み放題!観光客に大好評だといいます。
なかでも注目を集めた企画が地元デザイナーとコラボし駅構内で“ファッションショー”。地元のPRにもつながりました。
行政との細やかな連携も利用者を取り戻すための大事なポイントだといいます。
ひたちなか海浜鉄道株式会社 吉田千秋社長
「この列車とバスの時間を(市に)調節していただいて」
市の協力のもと、バスと鉄道のダイヤを合わせ利用しやすい環境を整えることで集客を上げることに成功。
地元住民
「水戸行くときは、湊線に乗って、勝田で乗り換えて行く。千秋さんに代わってから一生懸命あの人企画するので湊線に乗る人は増えていると思いますよ」
その後も吉田社長はひたちなか市と連携し“少子化による地域の課題”にも鉄道会社として取り組みました。
■「少子化」逆手に…攻めの“新駅”に“延伸”
この学校は地域の少子化に伴い5つの小中学校が統合されできました。統合によって遠距離から通学する子どもが多くいると考え、あえて学校のそばに新駅を開業。今では全体の7割が鉄道通学を選び生徒たちの欠かせない足に。
ひたちなか市立美乃浜学園 中学3年生 黒澤向日葵さん
「かかる時間が歩きや車だと違うなと思った」
ひたちなか市立美乃浜学園 中学3年生 橋本惺哉さん
「時間通りに来てくれるので遅刻とかは相当減ったかなと思う」
さらに、この学校に通う生徒の定期代はひたちなか市が全額負担。その理由とは…。
ひたちなか海浜鉄道株式会社 吉田千秋社長
「(スクールバスだと)年間1億数千万という経費がかかるだろうと」
ひたちなか市の試算によるとスクールバスで学校に通うよりも鉄道の方がコストカットできるといいます。
ひたちなか海浜鉄道株式会社 吉田千秋社長
「うちの会社使っていただくと(経費が)800万ぐらいで済む。市の財政にも貢献しているのかなというのは自慢ではあります」
一度に多くの子どもたちを、まとめて送迎できるのも鉄道通学の強みです。
高校生の場合、市からの援助はありませんが120日分の定期代で1年間乗り放題というサービスも。
ひたちなか海浜鉄道株式会社 吉田千秋社長
「ちょっとでも保護者の負担が減るかなと」
こうした取り組みにより2022年度の利用者は111万人あまりと2年連続で更新。
そしてローカル線ではめずらしいあるプロジェクトに挑戦しようとしていたのです。その目的地は観光客でにぎわう、あの絶景スポット。
ひたちなか海浜鉄道株式会社 吉田千秋社長
「(Q.ここでまた新たな施策を考えてると)1.4キロちょっと線路伸ばそうかなっていう計画がいま進んでます」
年間およそ180万人が訪れる「国営ひたち海浜公園」。ネモフィラなどが人気を集め観光客が多く訪れています。この公園へのアクセスを高めようと路線を延ばし公園近くに新駅を整備。
観光により地域の経済効果も期待できるといいます。早ければ開業は6年後…。
ひたちなか海浜鉄道株式会社 吉田千秋社長
「もう正直キャパオーバーしちゃうんじゃないかなと思って心配はしてるんですけども鉄道っていうものは攻めてみると案外価値がありますよというのを証明できたらなと」
(2024年5月5日OA サンデーLIVE!!)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。