東京ディズニーシー(千葉県浦安市)にディズニーならではの世界観を取り入れた高級ホテルが誕生する。
それは「東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテル」だ。6月6日にディズニーシーに加わる新エリア「ファンタジースプリングス」と併せて開業する。同エリアは「アナと雪の女王」や「塔の上のラプンツェル」、「ピーター・パン」をモチーフにしている。
ホテルは、東京ディズニーリゾートを周回するディズニーリゾートラインのベイサイド・ステーションから歩いて数分の場所にある。大きな花をしつらえたエントランスを入るとまず目に入るのはラウンジだ。
ほかの高級ホテルに引けを取らないラウンジ
ラウンジで最も印象的なのは大きな3枚のガラス窓。そこからホテル名の由来にもなっているパーク内の泉(英語でスプリング)を見渡すことができる。天井も高く、雰囲気は高級ホテルそのものだ。中央のオブジェには同ホテルのモチーフである蝶とトンボが飾られている。
利用客がまず訪れる場所であるラウンジは、ホテルにとっての「顔」。ラグジュアリーホテルは、各自のテーマに沿った家具を配置したり、眺望のよい高層階や庭園が見える場所にラウンジを設けたりしている。
ファンタジースプリングスホテルもその雰囲気はラグジュアリーホテルにまったく引けを取らない。
メインエントランスを入るとまず目に入るラウンジ(記者撮影)ファンタジースプリングスホテルは2つの棟で構成されている。その中でも注目なのが高級棟の「グランドシャトー」だ。
客室数を56室と抑えた分、価格は1泊30万円以上と超強気の設定だ。都内のホテルではブルガリホテル 東京(中央区)や、アマン東京(千代田区)などと肩を並べる価格となっている。
【写真】高級棟「グランドシャトー」の内観やファンタジースプリングスホテルの外観など(17枚)棟に入るにはキャストによる確認やカードキーのタッチが必要で、グランドシャトー宿泊客は、ほかのホテル利用客と動線が分けられている。宿泊客はゆとりのある空間を楽しむことができる。
4月下旬、メディア向けに客室が公開された。記者が訪れたのはグランドシャトーにある「テラス&アルコーヴルーム」。寝室やシャワーのある空間とソファや机のあるリビングに分かれており、客室面積は70平米を誇る。
テラス&アルコーヴルームのリビング空間(記者撮影)一般的なラグジュアリーホテルの場合、通常の部屋は50平米程度。それを優に超える。またテラスからは、ファンタジースプリングス内の景色を一望することができる。
ミッキーと撮影のディナーコースも
グランドシャトーのもう1つの大きな特徴がレストラン「ラ・リベリュール」だ。本格的なフランス料理を提供するレストランは東京ディズニーリゾート内にあるディズニーホテルでは初となる。レストランを利用できるのは、当面の間グランドシャトーの宿泊客に限られる。
最も高いディナーコースは2万3000円となっており、アミューズ、前菜、魚料理、肉料理、デザートを楽しむことができる。また、同コースを頼むと、キャラクターグリーティング専用の部屋でミッキーマウスと写真撮影をすることができる。
高級棟のグランドシャトーに比べると、通常棟といえるのが「ファンタジーシャトー」。こちらは419の客室を有している。通常棟とはいえ宿泊料金は、ほかのディズニーホテルと同程度の1泊6万3500円からだ。
「ファンタジーシャトー」の客室。壁のくぼみを利用したアルコーヴベッドもある(記者撮影)ファンタジーシャトーの「スーペリア・アルコーヴルーム」は41平米。十分にくつろげる広さだ。「ラプンツェル」や「バンビ」などのディズニーキャラクターをあしらった内装も楽しめる。壁のくぼみを利用したアルコーヴベッドが特徴だ。ソファとしても利用できそうだ。
先述したようにグランドシャトーは外資系のラグジュアリーホテルと匹敵する価格帯だ。そのような高価なホテルをなぜディズニーリゾートに開業するのか。その裏側には、ディズニーリゾートの運営会社であるオリエンタルランドが進めている経営戦略がある。
コロナ禍を経てオリエンタルランドは、「量から質」へと方針転換をしている。まず入園者数の上限を引き下げ、入園者を減らした。2023年度の入園者数は2751万人と、2018年度の3256万人から15%ほど減少している。
1人当たり売り上げの上昇を重視
一方で入園者1人当たりの売上高を引き上げる策を取った。チケット単価の値上げや、時間を指定してアトラクションを利用できるディズニー・プレミアアクセスの販売だ。これにより1人当たりの売上高は2023年度に1万6644円と、2018年の1万1815円から40%程度上昇した。
この単価上昇によって全体の売上高が底上げされ、2023年度は売上高、営業利益ともに過去最高を記録した。
量から質への転換を推し進めるうえで重要なのが、体験価値の提供だ。ファンタジースプリングスホテルはこれまでと異なる客室やサービスを提供することで、ホテルでも1人当たり売上高を引き上げようとしている。
ホテル事業の売上高は883億円と同社の15%程度を占めており、テーマパークに次ぐ主要事業だ。ファンタジースプリングスホテルの成否はホテル事業の成長戦略を左右することになるだろう。
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