EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会は4月9日、中国製の風力発電装置への補助金に関する調査を開始したと発表した。
同委員会のマルグレーテ・ベステアー上級副委員長(競争政策担当)の声明によれば、スペイン、ギリシャ、フランス、ルーマニア、ブルガリアの5カ国で中国製の風力発電装置を取り扱うサプライヤーに対し、EUの「外国補助金規則(FSR)」に基づく調査を実施する。
欧州風力協会(ウインドヨーロッパ)のジャイルス・ディクソンCEO(最高経営責任者)は同日、欧州委員会の調査開始を歓迎するコメントを発表し、次のように述べた。
「中国の風力発電装置メーカーは、欧州メーカーよりはるかに安い価格を提示し、最大3年間の支払い猶予までオファーしている。(中国政府からの)不公正な補助金なしに、こんなことは不可能だ」
中国は「偏見と保護主義」と反発
一方、ヨーロッパに進出した中国企業の団体である欧盟中国商会(EU中国商工会議所)は、中国企業に対する欧州委員会の対応を憂慮する声明を発表。「FSRを口実にして中国企業に絶えず難癖をつけ、中国企業に対する偏見と保護主義(の台頭)という誤ったシグナルを世界に向けて発している」と批判した。
欧盟中国商会は、欧州委員会がFSRに基づく調査の過程で「外国政府による資金援助」の範囲を(恣意的に)拡大し、本来なら該当しないはずの多数の事例を補助金とみなしていると指摘。その結果、「中国企業が長年にわたり研究開発と市場開拓に投資してきた成果が損なわれ、著しく不公正な市場競争を強いられている」と主張する。
中国製の風力発電装置に対する調査開始は、寝耳に水の決定ではない。欧州委員会は2023年10月、風力エネルギー業界における公正な競争環境を確保するため、海外の風力発電装置メーカーによる不公正取引を注視していると表明していた。
欧州委員会のマルグレーテ・ベステアー上級副委員長は、反補助金調査のさらなる拡大を示唆する(写真は同委のウェブサイトより)ここ数年、ヨーロッパの風力発電装置メーカーはインフレ高進の影響(による原材料費や人件費の高騰)で深刻な経営難に陥り、悲鳴を上げている。例えばドイツのシーメンス・エナジーは、2023年9月期の通期決算で45億8800万ユーロ(約7563億円)もの最終赤字を計上した。
鉄道車両や太陽光パネルも
中国製品を狙い撃ちする欧州委員会の保護貿易的な対応は、風力発電装置に対してだけではない。前述の声明の中でベステアー氏は、「外国企業が(EU域内での)公開入札において不当な競争優位を獲得した疑いがある場合、われわれはすべて詳しく調査する」と述べた。
本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら例えば2024年2月、欧州委員会はブルガリア政府による鉄道車両の大量調達計画について、FSRに基づく調査を開始。その結果、中国の大手国有メーカーが入札撤回を余儀なくされた。
さらに2024年4月3日、欧州委員会はルーマニア政府が実施した太陽光発電所の建設・運営の入札について調査を始めると発表。この入札には、中国の太陽光パネル大手の隆基緑能科技(ロンジ)と国有重電大手の上海電気集団の子会社が参加していた。
(財新記者:趙煊)
※原文の配信は4月10日
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