(©︎HITSUJI WATABE/CORK)元日経新聞編集委員の高井宏章さん。高井さんが娘のために書いた『おカネの教室』では、世の中を動かすお金と経済の仕組みの本質をわかりやすく解説しています。今回は『漫画版  おカネの教室』を一部抜粋・再構成し、子どもと考える、借金に対する考え方について解説します。

借金に対してどんなイメージ?

みなさんは、「借金」と聞くと、どのようなイメージを持ちますか? おそらくは、「やってはいけないこと」「しないほうがいいもの」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。

もちろん扱いを間違えれば、借金は恐ろしい落とし穴になってしまいます。しかし、「借金」がないと、経済のシステムがうまく回らないこともまた事実です。

今回は、拙著「漫画版 おカネの教室」を使いながら、借金の効果についてお話ししたいと思います。まずは、中学生が先生からお金を借りるシーンをご覧ください。

※外部配信先では漫画を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

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いかがでしょうか?

私は、「お金にはタイムマシンのような機能がある」と考えています。突拍子もない話に聞こえるでしょうか。しかもその代表例が「借金」だと聞けば、さらに意外に思う人も多いと思います。実際、お金は時間を越える力が備わっています。

今、あなたは100万円が必要です。でも手元にお金がない。仕方ないので、今すぐ使わないお金を持っている誰かから100万円を借ります。期限は1年としましょう。1年後、あなたは貸し手にお金を返します。

この一連の流れから「お金の貸し手」を消し去ってみましょう。

今のあなたはお金を持っていない。でも、1年後のあなたは100万円を持っているのです。突き詰めれば、その100万円は「未来のアナタ」から借りたと考えてもいいのではないでしょうか。

返済のための100万円は、仕事をして稼ぐなり、株式投資でもうけるなり、何とかしてあなたが1年かけて貯めたものでしょう。

借金すれば、今のあなたは1年後の「未来のアナタ」を頼りにできるのです。まるでタイムマシンのようではないでしょうか。

さて、今度は貸し手の立場になって考えてみましょう。誰かにお金を貸せば、その間は自分では使えません。貸し手はその不都合を我慢することになる。何かご褒美がなければ、現在の貸し手は「未来の貸し手」を納得させられないでしょう。

残念ながら現実にはタイムマシンは存在しないので、ここで金利の出番となるわけです。金利という手間賃を払えば、あなたは「未来のアナタ」を頼ることができる。余裕がある貸し手は、遊んでいるお金を有効活用して、ちょっとご褒美がもらえる。

「かりる」と「ふやす」は表裏一体

『漫画版 おカネの教室』(玄光社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

こんな形で「かりる」と「ふやす」は表裏一体の関係でつながっています。その本質は、違う時点をつなぐタイムマシンのような役割です。銀行などが仲立ちすることでお金の足りない誰かと、お金が余っている誰かが円滑につながり、世の中全体のお金の過不足がならされて、経済の流れがスムーズになる。

最初にお話しした通り、借金をする・お金を貸す、という行為は「できるだけやらないほうがいい」という価値観が根強くあります。特に借金することにはあまりいい印象は抱かないでしょう。

しかし、借金自体は悪ではありません。むしろ経済が円滑に回るためには欠かせない営みです。ある国がうまく成長できるかどうかは、金融システムの発達度合い、有体に言えば「借金のしやすさ」に大きく影響されます。借金は悪、と断じるのは間違いになることがあるのです。

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