愛媛・今治市で開催されている「せとうちみなとマルシェ」が2周年を迎えた。約100店舗が出店し毎回1万人を集める人気イベントは、県外からも注目されていて、地域の未来を形作る大きな存在になっている。
毎回約100店舗が出店 県外からも
「なんと500円からスタートします。500円!」と、威勢のいいセリ声が響き渡る愛媛の今治港。月2回、定期的に「せとうちみなとマルシェ」が開催されている。
この記事の画像(16枚)新鮮な魚やグルメ、旬のスイーツや手作り雑貨など、様々な店舗がずらりと並び、毎回1万人が訪れる人気イベントとして定着してきた。
出店するのは毎回約100店舗で、地元・今治だけでなく遠くは広島・尾道市や倉敷市からも出店者が集まる。
倉敷市から出店のデニムショップの店員は、「3時に起きて4時前には出ました。初めて来たときに感動して、『岡山からなんです』というとスタッフの方も声をかけてくれて、めっちゃうれしくなって次も出たいとなって」と語る。
愛媛・西条市から出店のおむすび屋さんは、「(今治港の)背景も素敵ですし、ちっちゃいお子さんもご年配の方も誰でも楽しめるイベントになっている」と魅力を語る。
地元鮮魚店の店員は「お客さんに『この魚どうなのああなの』と、楽しく教えてもらいながら、会話ができることが成長に繋がっているかな」と語る。
1万人のため夜明け前から始まる準備
マルシェ開催日の朝6時。今治港にはすでにスタッフの姿があった。集まったのは運営スタッフと20人のボランティアで、マルシェ開始の3時間前から準備に入る。
まずは、70張りのテント設営をする。前日に業者が準備したテントを1つ1つ立ち上げていき、
強風でテントが飛ばされそうになると、すぐに重しを運んで固定する。この2年でスタッフの対応も慣れてきた。
そして、7時からは出店者の車の誘導だ。
運営委員は「正直人手はむちゃくちゃかかります。ただもう2年目になるので、運営委員もかなりブラッシュアップして皆さまの手間が減るように毎回毎回努力してるので、かなり楽に楽しくできるボランティアになっている」と語る。
ボランティアは今治市内の企業・団体への呼びかけや個人で登録した人たちで、毎回午前、午後にわかれて40人が手伝う。ボランティアの女性は「年間3~4回来ている」と言い、男性は「今年の3月からずっと毎回来てます。いろんな企業の方とか市民の方とかと交流ができるのですごく楽しいです」と語る。
ゴミ拾いをしているボランティアは高校生で、「初めてマルシェに来た時にボランティアしてる人を見たら、自分もしてみたいなとなってやってみようと思いました」と語る。
このボランティアに振るまわれるのが、恒例の賄いごはんだ。この日のメニューは愛媛・宮窪産のタイを使った「鯛めし」。調理も早朝から始まっていた。
この日は、120人分の「鯛めし」を電気釜で12升炊いて調理した。厨房に立つのは、地元観光協会とマルシェ実行委員会の会長を務める越智逸宏さんだ。マルシェ開催日には2年間欠かさず手作りの賄いごはんをふるまっていて、立場に関係なくイベントを支えあう。
越智会長は「御礼ですね。感謝の気持ち。ボランティアのお返しはいい食事を出してあげたい」と語る。
今治港を活性化し「交流の拠点」に
今治市でマルシェが始まったのは2年前だ。開港100周年を機に今治港を「交流の拠点」にしようと、実行委員会を立ち上げた。初年度に今治市がテントや調理施設のハード整備を支援した。
運営経費は、「協賛社(120社)の広告料」「出店のブース料」「売上の10%の手数料」で賄うが、運営経費はギリギリの状態だ。それでも、初年度の経済波及効果は10億円にのぼると試算されていて、スタッフの思いが大きな成果に繋がっている。
この日、広島・三原市の関係者が視察に訪れた。三原市では港の再開発を控えていて、港の活性化のヒントを探りに来たのだ。
越智会長は「継続は力なりで最低でも10年はやろやねと、20年30年やっていったら歴史になるので」と、長期的なビジョンを語る。
マルシェ運営委員会の原竜也委員長は「運営メンバーは給料が出るわけでもなく、運営メンバーだけでもスタッフが足りない、そうしたらボランティア出してもらうスキームを考えなくてはいけない」と課題を話す。
説明を聞いた三原商工会議所の森光孝雄会頭は、「毎月2回でしょ、これはイベントというより事業なんですよね。しかも自走、自分たちの収益で投資をしていくと。これから地方は中心市街地が活性化しないと地域の発展はないと思ってますので、そういう意味では全く同じロケーションでもあるので、非常にやり方は参考になりました」と語った。
まちの活性化につなげるには課題も
愛媛県外からも注目を集めはじめたマルシェ。今治市も今後の継続を後押ししたい考えだ。
今治市・徳永繁樹市長は「今治市としてもイニシャルコストでは支援しましたが、次年度以降、どういうふうに支えていけばいいのかは実行委員会の声もいただきながら、市民の納得と共感をいただける形で支援していきたいと思います」と、継続的な支援の意向を示す
毎回1万人を集めるイベントの継続は、地域や市民の活力にもなっている。一方で、このにぎわいをまちの活性化につなげるには課題もある。
原実行委員長は「マルシェの今のスキームだけで行くと、全部そこで自走するというのは正直厳しいと思っているんです。ただ、ボランティアとか運営メンバーが本当に毎回やってくれるから、経済波及効果の数字は上がってるんですね。マルシェは月2回その時だけじゃなくて、そうじゃない時に人が来るような流れにどうつなげていくか、というのがマルシェの目的でもあるので、まだまだやることはいっぱいあります」と語る。
「せとうちみなとマルシェ」は、2周年を迎えた今、地域の未来を形作る大きな存在となっている。1万人の笑顔と、それを支える数多くのボランティア、そして地域全体の熱意。この港町の熱気は、これからも続いていく。
(テレビ愛媛)
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