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家で”揚げ物”をした後の油、 捨てる人がほとんどだと思うが、実はその油を使って、飛行機が飛ぶ時代がもう目の前にやってきている。

■環境にやさしい燃料を活用するUSJ

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クリスマスイベントが始まり、多くの来場客で賑わうユニバーサル・スタジオ・ジャパン。その中でも開業以来、絶大な人気を誇るアトラクションといえば、「ジョーズ」のボートツアー。 突然巨大な人食いザメが現れ、迫力満点だが、実は22日からある変化が…

記者リポート:見た目は怖いジョーズですが、環境には優しくなりました。

 これまでボートの燃料は軽油を使っていたが、パーク内のレストラン施設で調理に使った油を回収し、精製して「バイオディーゼル燃料」に加工。”ジョーズ”のボートの燃料として活用できるようになった。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン 海老原陽さん:こういったものを通じて社会全体に貢献できるようなテーマパーク作りを進めさせていただきたい。

■食用油を「航空燃料」に 二酸化炭素の排出量を最大で8割削減

調理に使った後の”廃油”を燃料に使おうというこの発想。 実はもっと”大規模”なプロジェクトが大阪で進められている。報道陣に公開された堺市にある建設中の工場。何を作る工場なのかというと…。

日揮ホールディングス 西村勇毅さん:ご家庭やお店などで使用済みとなった食用油を、航空燃料にするための設備になります。

飛行機を飛ばす燃料に、”揚げ物油”など使用済みの油を加工してつくられた「再生可能航空燃料」=「SAF」。従来の航空燃料と比べて、3倍から5倍ほどのコストがかかる一方、二酸化炭素の排出を最大で8割削減できることから、空の脱炭素化のカギとして世界的な注目を集め、EUを中心に導入が進んでいる。

ポスト石油戦略研究所 大場紀章代表:気候変動問題において、従来の石炭火力を規制しようとか、発電と自動車に対する規制は結構進んできたけど、さすがに航空燃料も無視できないよね、何らかの形で切り替えていこうという流れになって。

■海外輸入に頼る現状 「初の国産SAF」の製造へ

日本政府も2030年から航空機に給油する燃料のうち少なくとも10パーセントを「SAF」にすることを掲げている。しかし航空会社からは… 。

JALの担当者:日本の航空業界の最大の課題は、国内において、SAFの量産、安定供給が進んでいないことです。

肝心のSAFは、海外からの輸入に頼っているのが現状。そこで今、「初の国産SAF」の製造を目指す大阪・堺市の工場に注目が集まっているのだ。

日揮ホールディングス 西村勇毅さん:みんなで資源循環で脱炭素をやっていこうという取り組みで、外から買ってきてただ造ればいいのではなく、国産であることが非常に重要。

 この工場は来年春から稼働し、年間3万キロリットルのSAFの製造を目指す。 政府が掲げる航空燃料の10パーセントをSAFとすると、東京~ロンドン間を約1050往復(2100回)飛行できるということだ。 これで一安心と思いきや、課題となるのがそもそもSAFの原料となる使用済み油の調達。

ポスト石油戦略研究所 大場紀章代表:いまは廃食用油から作るものが中心だけど、廃食用油自体が世界中で争奪戦になっている。

■廃食用油 身近な場所での調達も 業者が引き取り

使用済み油が飛行機の新たな燃料に代わる「SAF」。原料となる使用済み油の調達は、私たちに身近なところでも行われている。

京都で100年以上続く老舗豆腐店。油揚げや厚揚げなど、油を使った商品が人気だ。

北浦豆腐店店主 北浦裕二さん(42):これはひろうす。寒い時期になると、炊いていただいたり、おでんに入れていただいたり、冬場はよく売れます。

 店では毎日、40リットルほどの油を使っていて、以前は廃棄方法に頭を悩ませていましたが、今では業者が引き取りに来てくれます。

北浦豆腐店店主 北浦裕二さん(42):有料じゃないんで、こちらとしては非常に助かっているところです。再利用してもらうのはうれしいです。

油を引き取ったのは、30年ほど前からバイオ燃料事業に取り組んできた、京都の会社、レボインターナショナル。使用済み油からディーゼルエンジン用のバイオ燃料を製造してきたノウハウを生かし、堺の国産SAF工場への油の調達を担当している。

■「廃食油の争奪戦みたいなことになっている」

しかし最近困ったことがあるそうで…。

レボインターナショナル 越川哲也CEO:ここへきてSAF(の需要)というもので引っ張られて、廃食油の争奪戦みたいなことになっている。

 最近では、海外のSAF製造業者が、店にレボインターナショナルの何倍もの金額を提示して、使用済み油を買いあさっている事例もあるそうだ。

レボインターナショナル 越川哲也CEO:(取引先から)『他の業者がこんな値段で買うと言ってるんだけど、レボさんも買えるか?』と。そうすると、結局値段競争にしてるのは、他の業者がしてるんですけれども、その値段で買ったら、結局、ANAさん、JALさんに供給できる価格ではできないんですよね。

■新たな協定 一般家庭の使用済み油を提供

そんな中、レボインターナショナルや堺市などは22日、地域に眠っている資源の有効活用を目的に新たな協定を結びました。 ショッピングモールに回収BOXを設置。一般家庭から出た使用済み油を提供してもらう取り組み。

油を持って来た堺市民:夢があります。要らないものが資源になって。飛行機がこれで飛ぶとお聞きしたので。いつも捨てるものなので、活用していただけるならいいなと思って持ってきました。

 次世代の燃料「SAF」。私たちが使った油で飛行機が飛ぶ時代はもう目の前にきています。

■油の回収方法は? 「スーパーで回収箱設置があれば」

大阪の堺でもSAF の製造が始まるということなんですが、日本のSAF製造は、世界と比べて遅れている状況です。 専門家によると、SAFの目標10パーセントを目指すなら、およそ1年に170万キロリットルの製造を目指さないといけないんです。世界では食用油の争奪戦になる可能性もあるそうです。

日本では国内でSAFを作るための油そのものも足りていない状況で、家庭で使われている油は年間およそ10万トンありますが、ほとんど廃棄してしまっています。家庭で使っている油をどう回収するのかが問題です。

関西テレビ 神崎博報道デスク:取材にもあったように、ショッピングモールの回収箱みたいなものを、例えば各食品スーパーで身近に回収できる箱を置いてもらったら、買い物のついでに持って行ったりできるかもしれません。お豆腐屋さんのようにローリーみたいなもので、家の前まで回収に来てもらうとか、そういう仕組みがあれば便利かと思います。

SAFの国内製造はこれから進んでいくということで、堺市の工場では来年度のはじめごろからSAFの供給を始めるということだ。

(関西テレビ「newsランナー」2024年11月22日放送)

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