(ブルームバーグ):日本銀行の植田和男総裁、加藤勝信財務相、赤沢亮正経済再生担当相は3日夕、都内で面会し、政府・日銀が共同声明に沿って政策運営に万全を期すことを確認した。3者の面会は石破茂政権が発足してから初めて。

加藤財務相は、政府・日銀が「密接に連携し、共同声明に沿って、デフレからの早期脱却と持続的な経済成長の実現に向けて政策面に万全を期すこと」を確認したと説明。市場動向を「緊張感を持ちかつ冷静に注視する」とともに、市場とも丁寧にコミュニケーションを取ることでも一致したという。面会後、記者団に明らかにした。

植田総裁と会談した石破首相は2日、デフレ完全脱却を最優先課題とし、現在、追加利上げできる環境ではないと発言。植田総裁も時間的な余裕があると改めて表明した。年内の追加利上げ観測の後退から、急速に円安が進んだ。政府は日銀との共同声明の維持を速やかに確認し、足並みをそろえることで、市場の安定化を狙ったとみられる。

再生相がトーンダウン

赤沢再生相は面会後、金融政策を正常化していくという「大きな流れがあることは日銀総裁も私どもも認識している」と記者団に語った。その上で、「あとはタイミングの問題だ」として、利上げを急ぐことで「経済に水を差すことはできない」との認識を示した。

2日前には「ありとあらゆる面で経済を冷やすようなことは絶対にここしばらくはやってはいけない」とし、利上げは「慎重に判断していただきたい」と発言していたが、表現ぶりがややトーンダウンした。

日銀正常化路線に政治の逆風、石破首相発言で年内利上げ観測が後退

3日の円相場は一時1ドル=147円24銭と、1カ月半ぶりの円安水準を付けた。石破首相の追加利上げに慎重な発言や、予想以上に強い米雇用指標を受けて円売り・ドル買いが強まった。ブルームバーグが9月上旬に実施した調査では、エコノミストの9割近くが来年1月までに追加利上げを行うと予想していた。

加藤財務相は市場動向に関し「株価や為替についてはコメントしない」としつつ、「投機的な動向も含め、為替市場の動向を緊張感を持って注視したい」と話した。赤沢再生相も為替の水準についてのコメントを控えた。

政府と日銀の共同声明は、2013年1月に当時の安倍晋三政権と白川方明総裁の日銀との間で、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現を目的に結ばれた。デフレからの早期脱却に向けて、日銀は2%の物価安定目標を「できるだけ早期に実現することを目指す」とする一方、政府は機動的なマクロ経済政策運営や成長戦略、持続可能な財政構造の確立に取り組むことを明記している。

21年10月に発足した岸田文雄政権でも、当時の鈴木俊一財務相、黒田東彦日銀総裁らが11月に面会し、政府・日銀の共同声明の考え方に従って連携することを確認している。

(加藤財務相、赤沢再生相の発言を追加して更新します)

--取材協力:横山恵利香、照喜納明美、広川高史.

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