(ブルームバーグ):中国当局の大胆な景気刺激策に触発され日本の中国関連株は上昇しているが、これは「偽りの夜明け」かもしれない。中国市場が日本株に与える影響力が弱まりつつあるためだ。

日本企業の中国撤退が相次いでおり、調査によると中国に進出している日本企業のほぼ半数が、今年は投資を増やさない、あるいは削減する方針を示している。アジアの経済大国である両国間の地政学的な緊張が高止まりする中、中国による一連の景気刺激策から日本企業が受ける恩恵が小さくなっていることを意味する。

JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは、こうした政治・経済環境が続く中では、日本の中国関連企業の多くにとって、中国向け輸出増加と販売拡大をテコにマージンの拡大を狙うといった旧来の延長戦にある事業戦略を実施することが困難になっているとリポートで指摘した。

経済活性化に向けて中国当局が大規模な景気浮揚策を発表した後、中国経済との関わりが大きい日本企業の株価は急騰した。

9月下旬以降、中国の主要4都市が住宅購入に対する規制を緩和し、中国人民銀行(中央銀行)は既存の住宅ローン金利引き下げを含む広範な景気刺激策を打ち出した。中国各地の都市はこれより前から、同国が長年抱えてきた不動産危機を解決するため、住宅購入者への優遇策や値引きを実施している。

日本の上場銘柄で構成されるゴールドマン・サックス証券の中国消費関連銘柄と工業/非消費関連のバスケットは、中国本土の都市が不動産部門の支援措置を講じた8月上旬以来、ともに約20%上昇している。

ただ、株価上昇は一巡した可能性があるとの見方が強まっており、投資家の関心は11月の米大統領選挙を前に米国と中国の地政学的な緊張に集まっている。大統領選の結果は世界最大の経済大国である両国の関係に影響を及ぼす可能性が高い。米国市場で中国の景気刺激策を受けた株式相場の反応は限られている。

日本の新たな首相に防衛相などを歴任した石破茂氏が選出されたことも緊張感を高めている。「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」構想に意欲を示す石破氏はアジア地域における安全保障体制の強化を支持しており、中国との緊張を高めるリスクがある。

岡三証券の大下莉奈シニアストラテジストは、中国関連銘柄に最も影響するのは、中国の経済立て直しや株価上昇の持続性だとし、11月の米大統領選挙の行方にも注目だと話す。「誰が大統領になっても厳しい対中姿勢はこれからも続いていく」との見方を示した。

外交的な緊張は長引きそうだ。中国は日本政府に対し、中国企業への半導体製造装置の販売と関連サービスの提供をさらに制限すれば、厳しい報復措置を講じると示唆している。

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