(ブルームバーグ):都市ガス事業者の業界団体、日本ガス協会の内田高史会長(東京ガス会長)は、液化天然ガス(LNG)の引き取り条件の改善について、日本政府に産ガス国などへの働きかけを強化するよう呼びかけた。

内田会長は9月30日の都内のインタビューで、LNGの将来需要が不透明で余剰となるリスクがある中、第三者への転売を制限する「仕向け地条項」が付いている長期契約で調達するのは困難と話した。そのため政府としてそういった制限が撤廃されるよう働きかけをしてもらいたいと続けた。

仕向け地条項とはLNG契約において、LNGを輸送する船の目的地(仕向け地)を制限する条項。再販売を事実上制限することで、供給側にとっては、販売先が売り手となって競合することを防ぐメリットがある。

仕向け地条項を巡っては公正取引委員会が2017年に独占禁止法違反の疑いがあるとの報告書をとりまとめたのを機に、国内の電力・ガス会社は供給者側に同条項の緩和を働きかけてきた。エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、仕向け地条項の付いた契約の割合は減少傾向にあるが、30年度時点でも日本企業の契約数量の4割にそういった制限が残る見通しだ。

強気なカタール

内田会長は東京ガスが世界有数のLNG輸出国とカタールとの長期契約を更新しなかった背景には、同国から供給されるLNGは「仕向け地が自由にならない」ことが要因だったと話した。仕向け地条項見直しについてカタールが難色を示している状況は「変わっていない。強気だ」と続けた。

カタールからのLNG輸入は11年に発生した東日本大震災と福島第1原発事故などで増加し、年間1600万トン超と一時は輸入量全体の2割弱を占めた。その後は国内最大の発電事業者であるJERAが21年末に大型の長期契約を更新しなかったことなどで減少傾向が続いており、昨年はカタールが占める割合はわずか4.4%だった。ブルームバーグNEFのデータによると、東京ガスのカタールとの契約も21年に終了している。

原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギーの普及などを背景に、日本のLNG需要は減少傾向にあり、昨年の輸入量はピークだった14年から約25%減となった。LNGは化石燃料の中では温室効果ガスの排出量が少なくトランジションエネルギーとして重要との声もあるものの、需要の見通しが不透明なことなどから電力会社やガス会社は長期契約の更新や新規契約が難しい状況になっている。

 

LNGを含めた中長期的なエネルギー政策の方針「エネルギー基本計画」の見直しに向け、政府は5月に議論を開始している。内田氏は、日本が将来的にLNGを買わなくなると供給側に見透かされるのは調達交渉上も望ましくないと指摘。新たなエネ基では、LNGが脱炭素の流れの中にあっても必要で、日本は将来的にも「まだまだLNGを使うぞという姿勢」を見せることが重要との考えを示した。

内田氏は自身がアジア州代表副会長を務めるLNG輸入者国際グループ(GIIGNL)が今月7日に広島で開催する総会で、LNGの安全保障上の重要性や脱炭素に向けた移行期における必要性などについて協議する見通しであることも明らかにした。

(内田氏の発言を追加して更新します)

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