(ブルームバーグ):1日の日本市場では株式が反発。前日に日経平均株価が8月の急落時以来の下落率となり押し目買いが入りやすい中、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を受けて円相場が下落し、輸出関連株中心に買われた。債券は小幅高。

パウエル議長は9月30日、ナッシュビルで開かれた全米企業エコノミスト協会(NABE)の年次会合で講演。経済がおおむね想定通りに進展すれば、「時間とともに」政策金利を引き下げていくと表明した。経済全般については、しっかりとした足取りを続けているとの認識を改めて示した。

パウエルFRB議長、政策は「時間とともに」より中立スタンスに (3)

野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは、パウエル議長の講演は利下げ期待をやや弱める内容だったが、経済が順調に推移しているという発言を市場は好感したと指摘。世界的なリスクオンムードで日本株に見直しが入りやすいとの見方を示した。

日本銀行が追加利上げを急がないとの見方が広がったことも、株高、円安、債券高につながった。日銀がこの日公表した9月の金融政策決定会合の「主な意見」では、米国はじめ海外経済や不安定な金融市場の動向を見極める必要があるとして、追加利上げに慎重な声が相次いだ。

米経済や不安定な市場見極め、追加利上げに慎重な声相次ぐ-日銀意見

株式

日本株は大幅反発。円安で業績不安が和らぐ機械や電機、自動車といった輸出関連株が上昇した。米バークシャー・ハサウェイの円建て社債発行の計画が材料視されて商社株も高い。

ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャーが円建て社債の発行に向けて主幹事を起用したことを受け、商社を含むTOPIX卸売業指数は2.6%上昇。三井物産、伊藤忠商事、住友商事の株価は3%以上上昇した。バフェット氏のこれまでの商社株投資が日本株最高値更新につながった面があり、今後日本株を買い増すかどうかを投資家は注目している。

フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドは、バークシャーの起債は日本株全体にとっても「心強い買い材料だ」と話し、商社株への期待も当然高まるとみる。T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、バークシャーが日本株は割安との認識を持っている可能性はあると指摘した。

米バークシャーが円建て債発行計画、今年2回目-日本株投資期待 (1)

 

為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=144円台前半に下落。パウエルFRB議長の発言で米国の大幅な利下げ期待が低下した一方、日銀の主な意見を受けて追加利上げ観測が後退した。月初で実需の売買も指摘され、円売り・ドル買いが優勢だ。

大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、需給的に円売り・ドル買いに傾斜した流れが継続しているとし、「ひとまず『石破ショック』は消化した感じで、円高圧力は低下しつつある」と指摘。日銀については「過度な円安一服で追加利上げは急がなくてよいという意見に集約しつつある印象だ」と話した。

三井住友信託銀行米州部マーケットビジネスユニットの山本威調査役(ニューヨーク在勤)は、米国で今後重要な経済指標の発表が相次ぐため、「指標次第で相場が上下する可能性がある」と警戒する。1日発表の指標では8月の求人件数や9月の供給管理協会(ISM)製造業景況指数などが注目されている。

 

債券

債券は先物や超長期債中心に小幅高。日銀の主な意見でハト派的な声が多かったことを受けて買われた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは日銀の主な意見について、会合後の植田和男総裁の会見と内容は変わらないとした上で、慎重論を唱えるメンバーが多かったことが買い材料視されているのかもしれないと語った。

りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは「石破茂氏はそれほど利上げに積極的ではない印象がある」と指摘。金利の引き上げがまだ先になりそうなことを考えると、「金利収入が得られないことによる機会損失が大きいため、債券を持たないリスクを意識している」と述べた。

新発国債利回り(午後3時時点)

 
--取材協力:田村康剛.

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