(ブルームバーグ):米シティグループは、日本企業が関わる同意なき買収案件での財務アドバイザーの引き受けに前向きな姿勢を示した。大型案件を含めて企業からの買収提案に関する相談が増える中、ステークホルダーにとっての「最善の選択」を基準に判断する。

シティグループ日本拠点副会長で投資銀行部門トップの福田祐夫氏はインタビューで、買収される側の同意なしに企業の合併・買収(M&A)を提案するケースでの財務アドバイザーの引き受けに関して「株主に限らず各ステークホルダーに対して意味のあるアクションであるのか、資本市場での正しい行為であるのかを考えて判断する」と述べた。

幅広い取引先との関係やレピュテーションリスク(評判を損なう恐れ)を考慮し、かつては敵対的買収において大手証券会社が財務アドバイザーを務めるケースは珍しかった。ただ、国内の大手企業も含めて同意なき買収に踏み切る例が増えており、証券会社の関わり方にも変化が生じている。

シティグループ証券の安久芳伸M&A本部長は「大義がある案件なら積極的な買収提案というものをもちろんやっていきたい」と言及。実際に財務アドバイザーを務める際には「社内のグローバルのコミッティーを通した上で、かなり慎重に判断する」と述べた。

第一生命ホールディングスは、企業向けの福利厚生サービスを手がけるベネフィット・ワンに対して、対抗的な株式公開買い付け(TOB)に乗り出し、買収に成功した。カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールがセブン&アイ・ホールディングス(HD)に買収を提案するなど、外国企業による日本企業買収の活発化も見込まれている。

福田氏は日本企業が関わるM&Aについて、東京証券取引所によるコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改訂や、真摯(しんし)な買収提案を受けた場合には真摯な検討を促す「企業買収における行動指針」を経済産業省が昨年8月に公表したことなどを受けて「環境が整った」と指摘。「M&A案件が欧米型のボリュームに近い経済規模に見合った状態になる第一歩」と述べた。

また、安久氏は「アクティビストから提案を受けるという危機感だけでなく、内外の同業企業等から買収提案が来るのではないかという危機感も出てきている」として、そうした危機感が「経営に対する規律が働く方向に作用する」との見方を示した。

ブルームバーグのデータによると、26日時点での日本企業に関連するM&A案件の総額は前年同時期と比べて7%増と3年ぶりの高水準にある。シティ証はM&A助言ランキングで現在11位。昨年の12位から順位を上げており、福田氏は年間でトップ10入りできると見通した。

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