(ブルームバーグ):セブン&アイ・ホールディングス(HD)に買収提案するカナダのコンビニエンスストア大手、アリマンタシォン・クシュタールに対して、より高い金額を提示させるために、7&iHDはもっと努力をしなければならない。今こそ、長年の課題を解決すべき時だ。

今回の買収提案が、外国企業による買収に日本が門戸を開いているかどうかを示す象徴的な出来事であることに異議を唱える人はいないだろう。7&iHDの運命は政治ではなく、入札価格によって決められるべきで、同社はクシュタールに高値を支払わせるために手を打つ必要がある。

7&iHDがどこの国の企業だったとしても、株価に対して50%のプレミアムや、競合他社と近い水準のEV/EBITDA倍率を要求するのは恥ずかしがることではない。この場合、買収提案額は700億ドル(約9兆9000億円)に近づくだろう。

その水準になれば、得られる可能性のあるリターンに対して資本コストが重くなりすぎるため、クシュタールは買収をためらうかもしれない。

どうすれば7&iHDはクシュタールの買収提案額を引き上げることができるのか。幸い7&iHDは正しい成長戦略を持っている。コンビニエンスストア事業に集中し、グローバル展開を推し進めるというものだ。企業統治(ガバナンス)も改善された。

残された課題は、この戦略の実現性に対する信頼感を醸成することだ。イトーヨーカ堂を中心とするスーパー事業の新規株式公開(IPO)実現に向けた検討を開始するという4月の発表は、社内の意思統一が図れていない印象を与えた。

手っ取り早い施策は、非中核事業を全て売却することだ。IPOよりも、スーパー事業からの撤退の方が迅速かつ容易だ。また有価証券報告書によると、議決権ベースで46.6%を所有するセブン銀行にもプレミア価格がつく可能性がある。

米国のコンビニ事業でのコスト削減に向けた取り組みの開示も求められる。ガソリンの利益率の低さを考慮しても、米国事業の収益性は日本事業に比べて低い。

成長戦略が迅速に履行されれば、買収は成立せず、歴史は繰り返されないだろう。その理由がクシュタールが適正な価格を支払うことを拒んだというだけであれば、悪くはない。

(クリス・ヒューズ氏はブルームバーグ・オピニオンのディール担当コラムニストです。コラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:How 7-Eleven Can Get a Big Price From Circle K: Chris Hughes(抜粋)

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