注目すべきビジネストピックをピックアップする「東京ビジネスハブ」。今回、音声プロデューサーの野村高文が、デジタルテクノロジー領域のリサーチャーであるcomugiさんと一緒に「ポイント経済とその未来」について深掘りしていきます。
「ポイント競争」の起点は?
野村:
今日のテーマは「ポイント競争」。ポイントを貯める「ポイ活」という言葉もありますが、皆さんどうでしょうか?ポイントを貯めている方も多いかと思いますが、興味がない方にとっては面倒に感じることもあるかもしれません。
私自身はどちらかというと後者で、一つのポイントを貯めていても、状況が悪くなると次に何を貯めるべきか調べるのが面倒になったりします。
今日は、その「ポイント競争」がどのようになっているのか、そして今、どこに人々が流れているのか、各社の思惑を伺っていきます。
では、今日のビジネストピックをご紹介します。「PayPay vs 楽天の経済圏、ポイント還元勝負は終焉?」というテーマです。「ポイ活」という言葉、耳にされたことがあると思います。
comugi:
そうですね、ポイ活はあまりしていないんですけど、気がついたら勝手にポイントが溜まっている感じです。
野村:
まさにそうですよね。ポイントカードを出しておくだけで損をしないような気がしますし、スマホに全部入れてバーコードを出すだけなので、それぐらいなら使いますよね。
comugi:
昔は個人情報が取られるのが嫌で、ポイントカードを使うのをためらっていた方も多かったですけど、今ではあまり気にしない人が増えていますよね。
野村:
確かに。各社が顧客獲得のためにポイントを増やしていく競争をしている背景もありますよね。そもそも、このポイント競争はどこから始まったのでしょうか?
「PayPay 100億円あげちゃうキャンペーン」の影響
comugi:
ポイント競争の起点は2019年の「PayPay 100億円あげちゃうキャンペーン」です。QRコード決済が普及する前は、SuicaやQUICPayといった非接触決済が主流でしたが、PayPayがこのキャンペーンで大きく注目を集めました。
野村:
確かに、当時は「QRコード決済なんて流行らないだろう」と思われていましたが、今やクレジットカードに次ぐ普及率を誇るまでになりました。
comugi:
そうなんです。QRコード決済は端末が必要ないため、加盟店側も導入しやすかったんです。それがPayPayの大きな強みでした。電子マネーは端末が必要で、それを設置するコストが高かったため、特に小規模な店舗ではQRコード決済の方が導入が進みました。
野村:
なるほど。手数料が安くて導入コストも低い、だからPayPayが普及したわけですね。
comugi:
その通りです。PayPayは2019年のキャンペーンで一気に加盟店を増やし、今では1000万ヶ所以上で使えるようになっています。電子マネーのQUICPayやIDは数百万ヶ所程度なので、PayPayの方が圧倒的に多くの場所で使えるようになったのです。
野村:
確かに、小規模な店舗ではQRコード決済の方が導入しやすいというのは納得です。
comugi:
さらに、PayPayは当初、手数料がほぼ無料に近い状態で加盟店を獲得していきました。これが普及の一因です。
野村:
他にも主要なプレイヤーがいるんですよね?
QRコード決済の競争激化は手数料にも影響
comugi:
そうですね。もともとポイント経済圏を作っていたのはキャリアごとのポイントサービスです。例えば、楽天、ドコモのdポイント、auのPontaポイント、ソフトバンクのPayPayポイントなどです。これらが各社の経済圏を支えるポイントになっています。
野村:
Tポイントもありますよね?
comugi:
はい、TポイントはTSUTAYAから始まったサービスですが、最近では三井住友系のVポイントに名前を変えました。ポイントの競争は、どのポイントがどこで使えるかという戦いでもあります。Tポイントは一時期、排他的契約で他のポイントが使えないようにしていましたが、他社はオープン戦略で多くの加盟店を取り込んでいきました。
野村:
なるほど、そういう背景があったんですね。
comugi:
はい。この競争が続く中で、QRコード決済のPayPayや楽天ペイ、d払い、au PAYといったサービスが登場し、決済の技術革新とともにポイントの競争も激化していきました。
野村:
決済手数料の競争もありますよね?
comugi:
そうですね。QRコード決済はクレジットカードより手数料が安いので、加盟店にとって導入しやすい点が魅力です。しかし、今はそのQRコード決済の中でも手数料競争が起きています。三井住友カードはQRコード決済に対抗して、手数料を1.98%にまで引き下げました。
野村:
ポイントを使って顧客を獲得する戦略から、次の段階に進んでいるんですね。
ポイント獲得から「金融」の競争に進化
comugi:
そうです。今はポイントを貯めてもらうだけでなく、決済サービスを通じて金融商品や保険を提供する段階に進んでいます。例えば、PayPayは保険や証券サービスを提供しており、これが次の大きな競争の場となっています。
野村:
ポイント経済圏が金融に進化しているわけですね。
comugi:
その通りです。PayPayはすでに証券口座を100万人以上開設しており、銀行や証券に進出しています。楽天も同様に、ポイント経済圏を拡大しつつ、金融サービスを提供しています。
野村:
なるほど。金融の領域での競争がこれからますます激化しそうですね。
comugi:
そうですね。金融商品を提供することで、さらに顧客を囲い込み、次のステージに進んでいくのが今のポイント経済圏の戦略です。
(TBSポッドキャスト「東京ビジネスハブ」2024年8月20日 配信回より)
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ナビゲーター:野村高文(音声プロデューサー)
ゲスト:comugi(デジタルテクノロジー領域のビジネスリサーチャー)
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