当初の予定から約1年2カ月遅れて、秋田県横手市のJR横手駅東口に新たなビルが完成した。ビルにはJA秋田ふるさとなどが入居するほか、ホテルが営業する。17日はJA秋田ふるさとが完成と営業開始を祝った。
JR横手駅東口に完成した新たなビル。17日は、1~4階までに入居するJA秋田ふるさとの関係者が集まり、新しい事務所での営業開始を祝った。
JA秋田ふるさとの佐藤誠一組合長は「新本店オープンをさらなる飛躍の契機と捉え、新たな時代を切り開いていく」と新社屋でのスタートに期待を込めた。
ビルは鉄骨造りの7階建てで、延べ床面積は約7500平方メートル。
JA秋田ふるさとなどの事業者は当初、2023年7月にビルに移転する予定だったが、入居間近に柱が傾いていることが発覚し、柱を設計通りに戻すなど安全性を高める工事が必要になった。
新たな工事がこのほど終わり、ビルが完成。ビルにはJA秋田ふるさとのほか、仕出し店や横手商工会議所が入居した。また、5~7階で営業するホテルは10月のオープンを目指している。
完全な形で完成を迎えたビルだが、工事のミスが発覚したことで調査や新たな工事が必要になり、事業者だけでなく多くの市民が影響を受けることになった。
2023年7月、ビルの建設を担当する共同企業体が緊急の記者会見を開いた。ビルオープンのわずか3日前だった。
建物の2~3階部分に使う柱のボルトがずれていたにもかかわらず、報告されないまま工事が進んでいた。柱が傾いていることが分かり、オープンは延期。第三者機関による調査で、現場の責任者と管理技術者の2人が主導して工事のミスを隠したことが分かっている。
完成したはずのビルの安全性に疑問符がつき、出来上がった状態から柱を動かす難しい工事が進められることになった。工事は2024年5月に終了。第三者機関によりビルの安全が確認され、8月に事業者に引き渡された。
JA秋田ふるさとの佐藤組合長は「これまでの失敗をしっかりと反省して、これからの事業に生かしてもらいたい。二度とあってはならない失敗もある。様々な経験を積み重ねた中で、しっかりとした再開発事業の完成を望む」と話す。
工事ミスはほかの事業にも影響を及ぼした。
ビルの隣には生涯学習館「Ao-na(あおーな)」が建設されていたが、ビルの工事ミスを受けて整備が中断された上、安全性の確認に予定より時間をかけた。「Ao-na」は9月14日にオープンの日を迎えたが、予定より5カ月遅れた。
ビルを施工した共同企業体を構成する1社・横手建設の武茂広行社長は「県民や市民の皆さんはオープンを楽しみにしていたと思う。今後は再発防止策をしっかり履行して、2年余りある事業をしっかり施工したい」と反省の言葉を口にした。
JR横手駅東口の再開発事業全体の完成は2026年秋ごろの予定。
JR横手駅前の再開発事業は2021年7月に始まった。事業は、生涯学習館「Ao-na」とJA秋田ふるさとが入るビルのほか、立体駐車場や賃貸型マンションを一体で整備するもの。すべての完成は2025年6月の予定だったが、工事ミスで1年余り遅れることになった。
「Ao-na」は9月14日に当初より5カ月遅れでオープンしたが、中に入る図書館は以前の場所での運営が2月に終わったため、長い間「近くに図書館がない」という市民もいた。
オープン当日は、完成を待ち臨んだ市民でにぎわっていた。
訪れた市民は「工事ミスは全国の恥だった。誇れるようになってほしい」「どういうふうに期待していいか分からないが、市外から人が来るようになって全国的に有名になってほしい」「しっかり建物を造ってもらって、これからはより安心できると思う。良い方向に進んでほしい」と期待を込めていた。
市民から多く聞かれたのは、「工事ミスで市全体のイメージが悪くなってしまった」と心配する声だった。今後の運営で、横手市の明るい話題を生み出し、全国に届ける場所になってほしい。
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