(ブルームバーグ):中国の李強首相は今年1月、2023年は「大規模な景気対策」を打ち出すことなく目標を上回る経済成長を達成したと胸を張った。今年について同じことができる可能性は、現時点で低いように見える。

5%前後に設定されている今年の経済成長目標を達成するため、財政・金融政策の刺激策を速やかに増強するよう中国当局には圧力が強まっている。14日発表された8月の工業生産は2021年9月以来の長期減速を示し、消費と投資は予想された以上に低調だった。

この発表の数時間前、中国人民銀行(中央銀行)は期待外れの与信データと併せ、異例の声明を出した。この中で、デフレ対策の優先度が上がったことを示唆し、今後の追加金融緩和をほのめかした。

 

グロー・インベストメント・グループの洪灝チーフエコノミストは、「今回の一連のデータは大規模な財政拡張を求めている。それによって期待を変化させ、景気への信頼を回復させることが必要だ」とソーシャルメディアのX(旧ツイッター)で指摘。「そうでなければ、深刻な不況に進んでしまうだけだ」との見解を示した。

景気の悪化は、注目されている目標の未達を習近平国家主席が容認するのかを試している。習氏は過去ににわか景気と不景気を繰り返す原因となった大規模な景気刺激策を避け、成長のバランスを取っている。だが、成長目標を達成できなければ、中国経済に対する信頼はいっそう損なわれる恐れもある。すでに外国人投資家は、4-6月(第2四半期)に中国から記録的な規模の資金を引き揚げた。

中国の4-6月国内総生産(GDP)は前年同期比4.7%増に減速したが、8月のデータはそれ以降も景気軟化が続いていることを裏付けた。同四半期の成長率は5四半期ぶりの低さで、中国政府が通年の目標とする5%前後にも及ばなかった。

いまや注目されるのは、10月に発表される7-9月(第3四半期)の成長率だ。これまでのデータからは4.6-4.7%になったことが示唆されると、BNPパリバの中国担当チーフエコノミスト、ジャクリーン・ロン氏は見積もった。

胡偉俊氏らマッコーリー・グループのアナリストは、景気が10-12月(第4四半期)まで現在の勢いなら通年の成長率はその程度となり、「約5%の成長目標は達成できない」との見方を示した。散々な経済指標を受けてゴールドマン・サックス・グループなどウォール街の銀行は中国の通年の経済成長予測を引き下げ、その全てが公式目標の5%を下回っている。

中国が経済成長目標を達成できない場合、3年間で2度目になる。同国政府が1990年代初めに成長目標の設定を始めて以来、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が大きく響いた2022年は最大の未達だった。

習氏は先週、現行の政策を実施して「年間の経済・社会発展目標の達成に努力」するよう当局者に呼びかけ、成長率が5%をやや下回っても容認する様子を見せた。この言い回しは、目標を「断固として」達成するよう求めた7月に比べ、強くはないように思われるからだ。

「習氏は5%成長達成で当局者に過度の圧力をかけないようにしている」とスタンダードチャータードの大中華圏・北アジア担当チーフエコノミスト、丁爽氏は指摘。「当局者が政策を忠実に実行している限り、最終的な成長率が5%を小幅に下回っても容認されるだろう」と述べた。

 

習氏は北西部の甘粛省で開かれた共産党幹部との会合で発言した。同省は債務水準が高いとして中央政府から警告を受けた12の地方の一つだ。

中国の地方はかつて成長のけん引役を果たしたが、今では支出に及び腰だ。今年1-8月の新規の地方特別債の発行は2021年以来の鈍いペースで、ブルームバーグがまとめたデータによると、今年はまだ地方合計で約1兆4000億元(約28兆円)の発行枠が残っている。

中央政府が介入し、予算を修正して財政赤字拡大を決定した昨年の異例の措置が再現される可能性もあるが、今年の目標達成に向かうには時間も不足している。

丁氏は「追加的な刺激策が今すぐ導入されたとしても、通年の成長に対する影響は限られる。今年はあと3カ月程度しか残っていないという現実を指導部は受け入れつつあるのかもしれない」との見解を示した。

 

原題:China’s Deepening Slowdown Tests Xi’s Tolerance for Growth Miss(抜粋)

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