(ブルームバーグ):ドルの行方を占う投資家にとって、今後数カ月は厳しいものになりそうだ。米大統領選挙の討論会と重要なインフレ指標を受けて、市場は年末にかけてボラティリティーが高まると予想している。
通貨運用者は為替レートの変動をさらに大きくさせ得る、目まぐるしい潮流に向き合っている。米金融当局が来週利下げに踏み切るとみられ、米選挙が間近に迫る中、ドルの3カ月物インプライドボラティリティー(IV、予想変動率)は2023年序盤に起きた地方銀行危機以来の高水準となっている。
米政策金利の道筋を見極めることが鍵だとマネーマネジャーは指摘する。それがドルを動かす主要な材料になるという。しかしそれ以上に、米金融緩和の規模を主要国・地域との対比で市場が適切に織り込んでいるかどうか、11月の米選挙前後にどのようなポジションを取るべきか、見極めなければならない。一方で、地政学情勢が緊迫化していることも考慮する必要がある。予測不可能な形で市場に影響する可能性があるためだ。
テキサス州オースティンに本社を置くケストラ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオ運用責任者、デレク・シャグ氏は「為替の短期的な動きを予測するのは非常に難しい」と指摘。「年内いっぱいはドルが極めて不安定な展開になることに当社は身構えている」と述べた。
ドルは10日の米大統領選討論会を受けて、小幅に下落。11月の選挙でトランプ前大統領がハリス副大統領に勝利するとの見方に関連した賭けがさらに巻き戻された。ドルは8月の下げで年初来の上げが約半減した後、その下落分をまだほとんど取り戻していない。基調的な米インフレは8月に予想外に加速したものの、市場は年内に合計で約1ポイントの利下げが実施されると見込んでおり、投機筋はドルに対してここ1年余りで最も弱気になっている。
今後数カ月のドルの見通しに関する市場参加者のコメントを以下にまとめた。
キャスリーン・ブルックス氏
データ
注目点:「間違いなく、ドルを動かす第一の要因は相対的な金利差になる。年内のドル見通しは、今後の数週間に左右される可能性がある」
米利下げ観測が後退すれば、ドルには一息つく余地が生じると同氏。「選挙は為替市場での重要な要素ではまだないと考える」とし、「金融政策変更のまさに瀬戸際にあり、それが現時点では市場にとって政治よりもはるかに重要だ」と述べた。
トレード:「為替は今年、他の資産よりもボラティリティーが低い状況だが、ドルは徐々に2.5%回復する可能性がある」。「どの通貨に対して回復するかと言えば、それは円とユーロだ」
ただし、対ユーロでは向こう3-6カ月にわたって1ユーロ=1.11-1.08ドルのレンジ取引を想定しているという。
クリスティーナ・キャンプメニー氏
注目点:「米金融当局が緩和サイクルに着手しようとする中、それがサイクル半ばでの調整であっても、中立に向かうより大幅な緩和であっても、ドルはこの先一段と持続的な下降局面に入る可能性がある」
そうした調整の場合、ドルは最大5%値下がりする可能性があり、米金融緩和が中立水準に向かう持続的なものとなれば、最大10%下落することもあり得ると同氏は述べた。
トレード:「過去1年間にわたって比較的効率の高い方法で通貨キャリー収益を得ることが可能だった」。「世界の経済活動が好調を維持する限り、これは続くと考える」
インベスコはメキシコ・ペソやブラジル・レアルといった利回りの高い通貨を選好しているが、これらの通貨に対する最近の特異な圧力には留意している。同社はこうしたポジションの資金調達通貨としてドルだけでなく、ユーロや中国人民元、スイス・フランも選好している。
ミーラ・チャンダン氏
注目点:「ドルは現時点において、為替の世界を低利回り通貨と高利回り通貨の2つに分けている。米金利が上昇していた局面で最も大きな打撃を受けた通貨、つまり低利回り通貨は、米金利が再び低下するにつれて最も支えられる可能性が高い」
ドルのパフォーマンスは結局のところ、米成長見通し次第だと述べた。
トレード:「当社ではドルに関して控えめに強気だ。ドル高をなお想定しているが、過去数年に見られたドル高とは異なる種類のものだ」。ドルを支えるのは米成長のアウトパフォーマンスや高利回りというよりも、むしろリスクオフの逃避トレードとなる可能性がある。
リセッション(景気後退)となれば、ドル・円相場は1ドル=135円割れ、あるいは130円割れとなる可能性がある。ただし「全てのシクリカル通貨が弱くなるため、ドルはなお上昇する可能性もある」という。
ジョナサン・ダンシング氏
注目点:「米イールドカーブの短期ゾーンがどれだけディスカウントになっているかを踏まえれば、ドルがここまで弱くなったのも理解できる。しかしごく短期的には、やや売られ過ぎのように見える」
米国でリセッションのリスクが高まれば、質への逃避でドルは上昇する可能性が高い。しかし米金融当局が現在市場に織り込まれている以上の緩和を実施すれば、ドルは下落する可能性があると述べた。
トレード:「米金融当局がインフレに関してソフトランディングを成功させ、米経済を潜在成長率に近い状態で維持できるというシナリオの場合、ドルは今後約1年にわたってプラスマイナス3-5%の変動となるだろう」
原題:Where Money Managers See Dollar Going as Fed Cuts, US Votes (1)(抜粋)
--取材協力:Stefani Reynolds.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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