シリーズでお伝えしている「さがリサーチα」。
今回は一風変わった喫茶店の話題。武雄市北方町に去年2月にオープンした喫茶店、オープンのきっかけは地域で相次いだ水害でした。防災につながる交流の拠点を目指しています。
コンテナハウスに集まる地域の人たち。
武雄市北方町の久津具地区にある「喫茶えみや」です。
【喫茶えみや 荒川千代美さん】
「普通の喫茶店ではないけど、普通の喫茶店でもある」
運営するのはNPO法人代表の荒川千代美さん。
この地区で20年前から地域に根付いたデイサービスや宅幼老所といった高齢者施設を運営していて、去年2月「喫茶えみや」をオープンしました。
【喫茶えみや 荒川千代美さん】
「コンテナハウスでもいいので、喫茶店があって料理ができて食事も提供できて、災害があったらここでお弁当を作って持っていくことができると」
2019年、そして2021年と2度の水害にあった武雄市。
そのなかでも、北方町にある久津具地区は水に浸かりやすい集落といわれています。
【リポート・川浪】
「私たちの身長をはるかに越えていますね」
【荒川さん】
「もうこんなことがないように」
【川浪】
「久津具地区内もほとんどがこれくらい」
【荒川さん】
「そう、皆さん(ほとんどの家が)浸かっていた」
66世帯174人の住民のうち4割ほどが65歳以上の高齢者で、避難が間に合わなかった人はボートでの避難を余儀なくされました。
2度の水害で荒川さんは自身が運営する施設のトイレや入浴設備を被災者に開放したほか、市内のボランティア団体の協力を得て届いた物資や弁当の配布などを行いましたが、支援をするなかで見えてきた課題がありました。
【喫茶えみや 荒川千代美さん】
「やっぱり一番食事が問題だった。もう少しきちんとした場所があれば、もっとスムーズにできたかな。そこにキッチンがあればここで(弁当を)作ることができて」
そこで荒川さんは10年以上取り引きがないいわゆる「休眠預金」の事業を活用、750万円の助成を受け普段は気軽に立ち寄れる喫茶店として、また災害時には避難所になる喫茶店としてこの店をオープンさせました。
店が立地する場所は、過去に浸水したことはありません。
入口にはスロープと手すりがあってバリアフリーになっています。
この日は市内のヘチマ農家から新鮮なヘチマが届きました。
【喫茶えみや 荒川千代美さん】
「“これがとれたよ”と持ってきてくださる。それを“きょう〇〇さんからもらったお野菜です”と言ったら喜ばれる」
店で提供されるのは季節の野菜や地元の食材をふんだんに使った、日替わりランチやオムライス、ナポリタンなどどこか懐かしいいわゆる喫茶店メニューばかりです。
この日、手押し車を押しながら店にやってきた一人の女性。
近くに住む山口トヨ子さん93歳、週に1度この場所でランチを食べる常連の1人です。
【毎週店に通う 山口トヨ子さん】
「自分が好きな料理ばかりよりもためになるし、運動にもなるし」
山口さんの自宅は2度の水害では幸いにも浸水被害はなかったといいますが、もしものときはこの店に避難することを考えているといいます。
【毎週店に通う 山口トヨ子さん】
「水害のときだけでなく、私も歳だから、ここがなかったらどこかの施設に入っていると思うが、ここがあるからここに任せきりになっている、一生の助け船」
また月に1度、地域共生カフェを開いていて、参加者に防災や暮らしに役立つ情報を発信しています。
【参加者 武雄市在住】
「こんな感じで月に1回あっていたら、皆さん集まる場としていいかな」
【参加者 武雄市在住】
「災害時どこに行こうかより、あそこ(喫茶えみや)に行ったら安心だというのが一番大事かな」
普段から通うことで、食べ慣れた食事があり顔見知りの人たちに会えるなど、災害時の避難へのハードルを下げることにもつながるといいます。
【毎週店に通う 山口トヨ子さん】
「もし何かあったらここがあるよという基本はいつも考えている」
【喫茶えみや 荒川千代美さん】
「どこまでできるかわからないが、できるところまで頑張らせていただければ」
防災につながる地域交流を目指す「喫茶えみや」
通い慣れた喫茶店がいざというときには避難所に。
今までありそうでなかった地域防災を考える拠点として今後が期待されます。
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