(ブルームバーグ):日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収阻止に向け、バイデン米政権が最終調整中と伝えられる中で、買収実現を目指すぎりぎりの努力が始まった。日鉄の森高弘副会長はワシントンを訪問し、米政府高官らと11日に会談する。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
対米投資の国家安全保障上のリスクを審査する対米外国投資委員会(CFIUS)に関わる副長官級の高官らと、森副会長が協議を行うと英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は先に報じた。バイデン大統領は決定の前提になるCFIUSの勧告がホワイトハウスに届き次第、不承認の決定を下す予定だと複数の関係者が今月述べていた。
バイデン米大統領、日本製鉄のUSスチール買収計画阻止へ-関係者
両社は全米鉄鋼労働組合(USW)との交渉過程を文書で公表した。意思伝達が誤った形で流布していることを考慮し、開示に踏み切ったという。信頼に基づく生産的な対話を築き維持すべく、誠実で粘り強い姿勢を理解してもらい、労組指導部と組合員の懸念にも対処していることが示されると確信していると日鉄は電子メールで説明した。
USスチールが大統領選の激戦州であるペンシルベニア州ピッツバーグに本社を置くこともあって、買収計画は選挙戦で言及されるなど政治問題化した。
日鉄による買収が頓挫すれば、製鉄所の閉鎖やピッツバーグからの本社移転もあり得るとUSスチールは警告。同業の米クリーブランド・クリフスも全体ないし部分的買収に関心を示すが、日鉄の提示額の方がより大きい。
USスチール、日鉄による買収が不成立なら工場閉鎖へ-WSJ
バイデン大統領とハリス副大統領は、USスチールが国内で所有、運営される米企業であり続けるべきだと主張し、買収に反対する立場を表明。共和党候補のトランプ前米大統領もホワイトハウスに復帰すれば、直ちに買収を阻止する意向だ。
FT紙によると、一部の米当局者を含む多くの専門家らは、バイデン政権のアプローチに非公式に不満を示し、日鉄によるUSスチール買収によって国家安全保障上のリスクが生じるとの見解を一蹴した。
CFIUSは今回の買収について、日鉄が軽減できない安全保障上のリスクを生じさせると結論付けたが、国務省と国防総省は同意しなかったという。
日鉄は大統領選後の再申請を想定し、数週間前にCFIUSへの申請取り下げに動いたが、CFIUSから返答はなかったと同紙は伝えた。
米財務省と日本製鉄は、FT紙の取材に対し、コメントを控えた。
原題:Nippon Steel Sends VP Mori to Washington to Rescue US Steel Bid(抜粋)
(第3段落に労組との交渉過程を公表したことを加えます)
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