(ブルームバーグ):米大統領選の民主党候補ハリス副大統領と共和党候補トランプ前大統領の討論会が10日夜(日本時間11日午前)行われ、ハリス氏は「米国の中間層と勤労者の底上げ」に重点を置いたプランを持つ候補者は、このステージで自分だけだと述べ、自身の経済政策方針をアピールした。
これに対しトランプ氏は、「私は関税を賦課したがインフレは招かなかった」と反論。「ほとんどの人々が目にしていなかったようなインフレによって、ひどい経済になっている」と批判した。
最大の弱点
ハリス氏としては物価・コストの上昇という、選挙戦で自身の最大の弱点の一つに討論会で取り組んでいる形だ。インフレ高進は家計に打撃を及ぼし、バイデン大統領の経済政策について有権者は懐疑的な見方を抱いている。
ハリス氏は子供税額控除の拡大や初めて住宅を購入する人々へのローン支援計画、中小企業向け控除など、自身の計画を提示する一方、トランプ氏が提案している関税政策を批判した。
主な背景は次の通り。
課題の相違鮮明
両候補はいずれも同じ目標に向かって討論会に臨むことになる。世論調査で事実上のタイとなっている選挙戦で自分が優位に立つ瞬間をつかむことだ。
大統領選の投開票日まで2カ月足らずとなり、ペンシルベニア州フィラデルフィアで行われる今回の討論会は、両候補が直接論戦を交わす唯一の機会となる可能性がある。優勢を勝ち取りたい双方が直面する課題の相違は鮮明だ。
3回目の立候補となるトランプ氏は世論を二分する存在ではあるものの、人物像はよく知られている。トランプ氏の盟友の一部は、同氏が政策にフォーカスして個人攻撃を避けるよう望んでいる。大統領らしい振る舞いを示し、ホワイトハウス返り咲きの可能性を巡る有権者の懸念を和らげてほしいと期待するものだ。
一方、ハリス氏の場合、同氏自身やその政策方針について十分に分かっていないとする有権者や、バイデン政権のナンバー2であるハリス氏が変化をもたらす存在なのか懐疑的な有権者の懸念に対処することが課題だ。
討論会は数多くの米国民が視聴する見通しで、ハリス氏にとっては有権者に自分のイメージをうまく訴えるチャンスとなる。
民主党の世論調査担当者で、ヒラリー・クリントン氏とバイデン氏の選挙運動に携わった経歴を持つジョン・アンザローネ氏は有権者について、「ハリス氏を細かく調べるだけでなく、トランプ氏を再び観察することになるだろう」と語った。
バイデン大統領が選挙戦撤退を余儀なくされる引き金となった6月27日の討論会とは異なり、今回のイベントが直ちに重要な結果をもたらす公算は小さいものの、一部の州で近いうちに期日前投票が始まるタイミングで選挙戦の行方を左右することにはなりそうだ。
ハリス、トランプ両氏は選挙戦の結果を左右する公算の大きい激戦州での支持率で圧倒的なリードを確保する方法を探っており、討論会のパフォーマンス次第で違いが生じる可能性がある。
ハリス氏は自身について、政治的には穏健で非常に有能な候補であり、トランプ氏のような直情的な人物を相手にすることには慣れているとアピールしたいところだろう。トランプ氏は、ハリス氏を過度にリベラルな人物だと描き出し、バイデン政権の不人気な政策に結びつけようとするだろう。
世論調査では、今回の討論会はハリス氏陣営にとっての方が重要な意味を持つ可能性が示唆されている。8日に発表されたニューヨーク・タイムズとシエナ大学の世論調査では、ハリス氏についてもっと知る必要があるとの回答は28%に上った。トランプ氏についてはわずか9%だった。
原題:Trump, Harris Spar Over Economy, Abortion Rights in Debate、Trump, Harris Reach for Game-Changing Moment in Key Debate (1)(抜粋)
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