(ブルームバーグ):世界貿易におけるドル支配を強いるトランプ前米大統領の計画は、経済的混乱を引き起こし、最終的にドル安を招くリスクが高いと、コメルツ銀行のストラテジストが長期的シナリオとして指摘した。

同行の為替調査責任者ウルリッヒ・ロイヒトマン氏は9日のリポートで、ドルから別の通貨にシフトする国々に100%の輸入関税を課すというトランプ氏の警告が現実となった場合に、米金融市場で起こり得る理論的な一連の出来事を分析した。トランプ氏は7日のウィスコンシン州での選挙集会で同公約を示した。

トランプ氏、脱ドル化の国々に100%の輸入関税賦課へ-返り咲きなら

投資家はトランプ氏の選挙公約に注意を払うべきだというのがロイヒトマン氏の見解だ。「禁止関税」は意図した効果と逆の結果をもたらす可能性があると、同氏は警鐘を鳴らした。厳しい政策が各国のドル離れを誘発し、米国債の安全資産としての地位を脅かし、「大規模なドル安につながる」可能性があると、同ストラテジストは記述。

「トランプ氏はドル支配を強要しようとしている。それは全てを変える」とロイヒトマン氏。「米国が全面的な禁止関税を課せば、世界の経済システムに大規模な混乱を引き起こすだろう」と続けた。

 

もちろんだが、選挙公約が実現しないことは珍しいことではない。ドルは世界の基軸通貨としての地位を失うとの声も長年にわたって数え切れないほど聞かれたが、今のところそれは現実のものとはなっていない。

20年以上のキャリアを持つベテラン為替ストラテジストのロイヒトマン氏は、トランプ氏の大統領返り咲きでドル高になる論拠があることもリポートの中で認めている。ロイヒトマン氏は今年、ドルに対しておおむね強気な見方だ。

モルガン・スタンレーやドイツ銀行など他のストラテジストは、トランプ氏の関税政策と米経済成長促進がドル高につながるとこれまでに主張している。ある程度において、市場関係者があらゆるシナリオを示していることは政治的な風向きの変化に基づいて予測を立てることの難しさを浮き彫りにしている。

ドルの優位性はここ数十年に低下したとはいえ、国際通貨基金(IMF)によれば、2024年第1四半期(1-3月)には公的外貨準備高に占めるドルの割合は59%と引き続きトップ。ユーロは約20%で2位だった。

原題:Trump’s Dominant Dollar Idea Risks Backfiring, Commerzbank Warns(抜粋)

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