(ブルームバーグ):コンサルティング業界では採用活動を伴わない求人情報「ゴーストジョブ(幽霊求人)」の件数が2年ぶりの高水準に達した。求職中のコンサルタントにとっては、見せかけばかりの求人募集を追いかけていることも十分にあり得そうだ。求人サイト、グリーンハウスのデータで分かった。

金融やテクノロジー業界ではこうしたゴースト求人の件数が減少しているが、ホワイトカラー経済の業況を見極める目安とされるコンサルティング業界では2年前の26%から4-6月(第2四半期)には31%に上昇。求人市場全体で一般的とされる水準を大きく上回った。

ゴースト求人が占める割合(上からコンサル・金融・テクノロジー業界)

かつては一流人材が雇用主を選ぶのが一般的だったコンサル業界だが、近年では状況が一変。ここにきて不満を抱えた求職者が増えている。また採用担当者が何の説明もなく、採用や面接の過程ですべての連絡を打ち切るといったケースも相次いでおり、こうした対応にも批判が出ている。

独立系コンサルティング会社から最近レイオフされ、転職活動中のミシェル・レンツさんは、連絡を急に絶たれた経験が何度か続いたと話す。全く返事がないこともあれば、面接プロセスまで進んだ後に、採用担当者からの連絡が突如途絶えたこともあるという。

「気持ちに区切りをつけるためにも、自動で送られてくる不採用通知の方がまし」とレンツさんは話した。

ほんの2年前まで積極的な採用活動を進めていた同業界だが、足元では伝統的なコンサルサービスに対する需要減退に伴い、アクセンチュア、アーンスト・ アンド・ヤング(EY)、マッキンゼーといった大手が人員削減や採用抑制を進めている。米大統領選を巡る不透明感やリセッション(景気後退)懸念の再燃も業況の足かせだ。

業界調査会社ソース・グローバル・リサーチ社によると、昨年の米コンサル市場の成長率は5.2%と、伸びは前年の14%から鈍化。コンサルタントを利用している企業の半数近くがプロジェクトを縮小か延期、または中止していると回答した。同社では、今年の成長率を約6%と予想している。

ソーシャルメディアのレディット上でコンサルタントに人気がある掲示板では、500件以上応募しても仕事が見つからないと嘆く投稿があった。多くの職務で「求人が締め切り、もしくは保留になっている」として「もはやえり好みしている場合ではない」との焦りの声も聞かれた。

業界ニュースレター「リクルーティング・ブレーンフード」編集者、ハング・リー氏はこうした足元の状況について、雇用ペース減速に伴い、採用担当者が応募者に圧倒された結果である可能性があるとみている。またゴースト求人の原因として、採用枠が埋まった後もネット上に放置されている、採用が突然凍結になる、雇用主がすでに募集をかけている求人情報を外部人材会社が重複して掲載している場合なども考えられるという。

「偽の求人広告ではなく、単に本物の求人広告の重複なのだろう」とリー氏。「偽の求人を作る労力はコストに見合わない」と話した。

生活が厳しくなっているのは転職中のコンサルタントだけではない。現在雇用されているコンサルタントも賃金の伸びが鈍化している。

米民間調査機関のコンファレンスボードによると、コンサル業界の昇給率は3年連続で鈍化すると予測されている。コンサル企業の報酬管理責任者を対象とする調査で、同業界の平均給与予算は来年、わずか3.85%の増加にとどまる見通し。伸びは今年からやや縮小し、5%近かった2023年を1ポイント余り下回るとみられている。

コンサル業界の平均給与予算の伸び

コンサル業界ではまた、人工知能(AI)も雇用市場に一定の不確実性をもたらしている。企業はAI活用を模索しており、コンサルタントが提供するフルサービスを必要としなくなるかもしれないためだ。

コンファレンスボードの米ヒューマン・キャピタル・センター責任者、ダイアナ・スコット氏は「新たなAI技術の台頭により、顧客のニーズは変化しており、より小規模で機敏に動けるコンサル企業が力を増しつつある」と指摘。「コンサル業界はディスラプションの時代を迎えている」と述べた。

原題:Consultants Face ‘Ghost Job’ Listings and Shrinking Pay Bumps(抜粋)

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