(ブルームバーグ):かつてのカプセルホテルといえば終電を逃したサラリーマンが駆け込む安宿のイメージだったが、時代とともにおしゃれで個性的なカプセルが誕生し、イメージは変わりつつある。そんな中の一つ、ストレス社会に生きる現代人の睡眠データを収集して解析するサービスが育ってきた。
NTTデータグループ傘下のNTTデータは8月、13のカプセルホテルを展開するナインアワーズが東京都品川区にオープンした店舗を利用して、睡眠データを活用した商品開発などに繋げていくための共同プロジェクトを立ち上げた。
ナインアワーズが提供する宿泊施設では、宿泊客がデータの共有に同意すれば、マイクやカメラ、センサーを装備したカプセル内で睡眠し、後に無料の解析サービスを受けることができる。ホテルの運営者には、従来実験室のような環境でしか得られなかった睡眠データを簡単に集められるメリットがある。
同社が資金調達して睡眠解析サービスに乗り出したのは約3年前だ。渡辺保之取締役によれば、収集するデータは年間10万件を超え、データ提供の事業は黒字化を果たした。
謎多き睡眠
睡眠データがなぜ重要なのか。それは人の健康の大きな部分を占めるにもかかわらず多くが謎だらけだからだ。同社とNTTデータが共同で始めたプロジェクトでは、通常のセンサーに加えて脳波センサーと深部体温センサーを組み込むことも検討されている。
また、カプセルホテルはナインアワーズが情報提供する顧客企業にとって、アイマスクや飲料などのサンプルを試してもらう場にもなる。宿泊客にカフェインの摂取制限や特定の時間帯の睡眠を依頼する場合もあるが、代わりに宿泊客は料金の払い戻しなどの特典を得る。
東京都の赤坂にあるナインアワーズを訪れてみたところ、ロビーは仕事帰りの会社員や外国人観光客であふれていた。宿泊客らは心拍数やいびき、寝返り、呼吸、睡眠時間に関する解析情報を後で受け取るが、睡眠時無呼吸症候群やうつ病など疾患の兆候が発見されれば、病院への紹介状の提供も可能だ。
半面、睡眠データに関わる課題を指摘する声も聞かれる。慶応義塾大学医学部の岸本泰士郎教授は、これまで注目が薄かった眠りがビジネスになることは「非常に歓迎すべき」だとしながら、「基本的には脳波をとってこないと睡眠のステージをしっかり見るには限界がある」と話す。
ナインアワーズの渡辺氏は、現在はデータを集めることがメインだが、「将来は顧客が睡眠解析にお金を払うサービスまで向上したい」と話す。健康でいるための診断の機会として、眠りの場を提供するカプセルホテルが身近になる日もそう遠くないかもしれない。
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