全国的なコメの在庫不足で、首都圏などでは入手が難しくなっている。県外に比べ品薄感がない沖縄では、観光客がコメを買って帰ったり、県内在住者が県外に住む家族や知人に送ったりする動きが目立ち始めた。新米の流通が始まり、しばらくすれば需給の安定が見込めることから、卸売業者は「必要な分だけ落ち着いて購入してほしい」と呼びかけている。
農林水産省の発表によると、6月末時点で国内の主食用米の民間在庫量(速報値)は、前年比2割減となる156万トン。統計開始以降で最も少なくなった。
減反でコメの作付面積が減ったことや、猛暑による不作が背景にある。気象庁が巨大地震への注意を呼びかけ、家庭で備蓄する動きが広がったことも拍車をかけた。
■県内は販売制限なし
一方、県内のスーパーでは、棚が空になったり販売数量を制限したりする状況は見られない。
石垣市内ではここ数日、地元に帰る前にコメを購入していく観光客が目立つ。沖縄本島や宮古島市でも、5キロ入りの米袋の県外配送の依頼が増えているという。
盆明けにコメを贈る客は少なく、ましてや県外に配送する動きはこれまであまりなかった。「令和の米騒動」の余波に、流通関係者も「いつ落ち着くのか」と驚いている。
■お中元の後も販売量多く
県外ではコメの販売を制限する動きがある一方、県内のスーパーでは普段と変わらず商品が高く積まれている。沖縄は例年、お中元にコメを贈る文化があり、卸売業者が在庫の確保に腐心してきたためだ。とはいえ潤沢なわけではなく、卸売業者は消費者の動向や台風の行方に頭を悩ませる。
「盆まではコメを絶対に切らすことができない。どんなに高くても早めに仕入れてきた」。沖縄食糧(浦添市)の担当者は明かす。コメ相場は在庫不足を背景に上がり続けており、調達競争は激しさを増している。
県内卸は台風による物流のストップも想定して十分な在庫を確保しているため、現時点で問題はない。第一食糧(那覇市)の担当者は、県内卸が全国各地に取扱先をもっていることも奏功していると説明する。
■手荷物で米袋を持ち帰る観光客も
ただ、お盆が明け、本来は9月ごろから消費が落ち着くはずだが、例年になく販売量が多い。沖縄の在庫が安定しているという情報が出回り、県外からコメを買い付ける動きがある。
石垣市新栄町の「お食事処はるちゃん」を営む岩渕芳弘さん(84)は「千葉県からのお客さんはコメを10キロ買い、2千円かけて自宅に送ったようだ。届くのに1週間かかるんだって」と苦笑い。大阪府の別の男性は手荷物で米袋を持ち帰ったという。岩渕さんは「誰かがそうやって買っているのを聞くと、他の人も買い込んじゃうのかもね」と話す。
宮古島市のファーマーズマーケットみやこ「あたらす市場」でも、観光客がコメを買って配送を依頼する動きがあるという。担当者は「観光客がわざわざ島で買うのは珍しい」と驚く。沖縄本島の大手スーパー担当者は「県外へ5キロサイズを送る人が目立つ」と話した。
■消費者動向や台風を注視
例年にないコメの需要増を受け、おきなわ米販(南風原町)では米国産の取扱量を増やした。国産米を使用している取引先へ、米国産への切り替えを6月ごろから依頼し、応じる取引先もいるという。「10月ごろには品薄感が落ち着く見込みで、コメの確保は今が一番厳しい」と指摘する。
他の卸売業者も「国産の高値が続けば米国産の需要が上がる」とにらむ。
新米の本格的な流通が始まれば需給は安定に向かうとみられる。ただ台風などで物流が止まれば、県内でも在庫が逼迫(ひっぱく)する可能性があり、卸売業者は状況を注視している。
(政経部・大川藍、金城紅映、八重山支局・矢野悠希)
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