(ブルームバーグ):米鉄鋼大手USスチールは、日本製鉄による買収が不成立になった場合は数千人の労働組合員の雇用がリスクにさらされると述べた。約141億ドル(現行レートで約2兆300億円)での買収計画を阻止しようとする労組幹部や政治家に警告を送った格好だ。

USスチールは4日の発表文で、日鉄による買収が破談となれば本社がピッツバーグに残れるかどうか「深刻な疑問」が生じると説明。本社が移転すればピッツバーグの雇用や税収、同社による地域貢献が失われることになると同社は述べている。

USスチールのデービッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューでも同様の見解を示していた。WSJによると、ブリット氏はインタビューで、日鉄はUSスチールの老朽化した製鉄所に約30億ドルの投資を約束しており、それが競争力を保ち雇用を維持する上で欠かせないと指摘。「日鉄買収が不成立に終わるなら、それは実現されない。その資金がないからだ」と述べたという。

USスチールのブリットCEOは、雇用の安定を巡る労組の懸念をあおることでリスクを承知の賭けに出た格好だ。同買収には共和党と民主党がともに異議を唱えているほか、ピッツバーグを拠点とする強力な鉄鋼労組も反対している。

ピッツバーグがあるペンシルベニア州のシャピロ知事は記者会見で「CEOがあのようなコメントをするのは、USスチールの従業員を非常に軽視していると思う」と発言。「われわれはペンシルベニア州で雇用を維持し続けなければならないのに、こうした発言は労働者を非常に軽視している」と述べた。

原題:US Steel Warns Thousands Jobs at Risk Without Nippon Steel Deal(抜粋)

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