(ブルームバーグ):バイデン米大統領は、日本製鉄による約141億ドル(現行レートで約2兆300億円)でのUSスチール買収計画を阻止する準備を進めている。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
これに対し、USスチールは4日午後の発表文で、日鉄による買収完了のため、「法律の下で可能なあらゆる選択肢を追求する」と表明した。
日鉄による買収提案は対米外国投資委員会(CFIUS)の審査対象となっており、バイデン氏はCFIUSの決定が自身に伝えられ次第、阻止する計画だという。未発表の情報であることを理由に匿名で述べた関係者によれば、早ければ週内に決定する可能性がある。
4日の米株式市場でUSスチールの株価は一時24%の急落となった後、約17%安と2017年4月以来の大幅下落で取引を終えた。買収を阻止するバイデン氏の計画についてはワシントン・ポスト紙が先に報じていた。
USスチールは発表文で「CFIUSのプロセスに絡んで当社はいかなる最新情報、大統領令も受け取っていない」と説明。「日本は米国にとって最も信頼できる同盟国の一つであり、この取引に関して国家安全保障上の問題は全くないとする事実を引き続き確認する」とした。
日鉄によるUSスチール買収計画は大統領選挙が行われる今年、激戦州の一つペンシルベニア州で注目を集めてきた。同州にはUSスチール本社のほか、この買収案に反対している全米鉄鋼労働組合(USW)の本部もある。ホワイトハウス当局者によると、CFIUSから大統領への勧告はまだされていない。
この買収案を阻止した場合、訴訟を招く可能性がある。関係者の1人は、日鉄が自主的に買収案の撤回を計画している兆候は見られないと述べた。
ここ2週間には同買収計画を巡りさまざまな動きが見られた。日鉄は買収を計画するUSスチールの製鉄所に総額13億ドルの追加投資を行うと発表。買収完了後、同社の取締役の過半数を米国籍とする方針も示した。
またUSスチールは4日、日鉄による買収が不成立になった場合は数千人の労働組合員の雇用がリスクにさらされると警告。破談となった場合は本社がピッツバーグに残れるかどうか「深刻な疑問」が生じるとした。
バイデン大統領はかねてUSスチールは国内で所有・運営されるべきだと公言しており、民主党大統領候補ハリス副大統領も2日、同じ立場を表明した。共和党大統領候補のトランプ前大統領も大統領に返り咲いた場合はこの取引を阻止すると明言している。
過去、大統領がこのような買収案件を差し止めた例はほとんどない。買収計画の支持者らは中国と競合可能な規模の企業の誕生につながることなどを強調し、同盟国の日本の企業による買収案を拒否すべきでないと主張している。
CFIUS審査の進捗(しんちょく)状況やスケジュールについてのヒントが示されることはほとんどなく、決定内容や決定を下したのかどうかは不明だ。
原題:Biden to Block Nippon Steel’s Proposed Takeover of US Steel (3)、Biden to Block Nippon Steel’s Proposed Takeover of US Steel(抜粋)
(USスチールの反応を追加して更新します)
--取材協力:Sana Pashankar、Doug Alexander.
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