(ブルームバーグ):3日の日本市場は長期金利が1カ月ぶりの水準に上昇(債券価格は下落)。国債入札がやや弱めの結果となり、債券売りが膨らんだ。日本銀行の植田和男総裁が金融緩和の調整方針を改めて示し、円は対ドルで上げ幅を拡大した。

植田総裁(8月23日、国会)

新発10年債利回りは一時0.925%と8月6日以来の水準に上昇した。10年国債入札の軟調を受けて、現物・先物ともに売りが先行した。日銀の植田総裁が経済・物価見通しが実現していくなら利上げ継続との方針を経済財政諮問会議で提出資料を通じて示し、円上昇が加速した。株式市場では金利上昇で収益が膨らむ金融株が買われ、東証株価指数(TOPIX)は6営業日続伸した。

植田総裁は従来の方針の繰り返したため、為替相場は反応したが債券相場は反応しなかった。日銀の早期追加利上げ観測は後退しており、米国の利下げも大幅ではなくなるとの見方も広がる。2日の米国市場が休場で手掛かり材料に乏しいこともあり、相場の方向性を読む上で市場は6日の米雇用統計を含めた指標や要人発言を待っている。米金融当局は日本時間の19日未明、日銀は20日に金融政策の方針を明らかにする。

みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストらは、日本で5日に賃金統計と高田創日銀審議委員の講演、米国では雇用統計など重要指標の公表が多く予定されているとして「円債市場の動向を見ていく上で注視する必要がある」と3日付リポートに記した。

債券

債券相場は下落、長期金利は一時0.925%と8月6日以来の高水準を付けた。10年国債入札の最低落札価格が市場予想を下回り、弱い結果となったことで売りが強まった。

入札結果は最低落札価格が101円57銭と市場予想101円62銭を下回った。大きいと不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は9銭。前回の50銭から縮小したが、7月の2銭は上回った。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.17倍と前回の2.98倍からは上昇する一方、7月は下回った。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは入札結果について「利回り水準が低く物足りなかったことや利回り曲線上でも割安感がなかった」と指摘した。5日に30年国債入札を控えて相場の上値は重くなると見込まれる半面、今週末に米雇用統計を控えるため、大きく売り込まれる展開にはなりづらいとした。

新発国債利回り(午後3時時点)

為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=146円台前半に上昇。米国の大幅利下げ観測の沈静化や日本株の上昇を受けて一時147円台前半に下落したが、日経平均が下落に転じるとともにやや円高方向に振れ、日銀総裁の提出資料を受けて上げが加速した。

大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、植田総裁の経済財政諮問会議での提出資料にアルゴリズムが円買いで反応したように見えるとした上で、発言自体に目新しさはないとした。

石月氏はまた、円の対ドル相場は昨夜の海外市場から大きな「行って来い」になっており、欧州時間で円の売り方がポジション調整を進める可能性もあるとみる。雇用統計まではこのような目まぐるしい展開が続くのではないかとしている。

オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、米国休場時にドル高・円安が進んだ反動でドルを買い過ぎた向きの売りが出ているのではないかと述べた。植田総裁が提出した資料も、こうした調整売りのきっかけになった可能性があるとした。

米経済がソフトランディング(軟着陸)できるとの見方から、市場では9月の米利下げ幅が50bpではなく25bpになる可能性が意識されている。

株式

東京株式相場はTOPIXが6日続伸した。国内金利が上昇し、銀行や保険といった金融株が買われた。陸運や建設など内需関連株も値上がりした。

TOPIX上昇に貢献したのは三菱UFJフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループで、東京海上ホールディングスは1カ月ぶりの高値まで上昇した。

これに対して金利上昇を嫌気して半導体関連銘柄は安く、日経平均株価は下落した。レーザーテックや東京エレクトロン、ディスコ、アドバンテストなどに売りが広がった。

アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは「国内実質賃金のプラスと堅調な設備投資から内需は今後堅調に推移するとみられ、その好影響は内需株中心に出てくる」と述べた。米国株対比で出遅れ感のある日本株には買いが入りやすいとした。

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2024 Bloomberg L.P.

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。