(ブルームバーグ):日本銀行の植田和男総裁は3日の経済財政諮問会議に出席し、物価の見通しが実現していくとすれば「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整」する方針を改めて示した。

植田総裁は、7月の金融政策決定会合で決めた利上げや国債買い入れ減額についての説明資料を会議に提出した。資料では「実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持」とも記し、引き続き経済活動を支えると強調した。

8月に開かれた国会の閉会中審査でも、同様の見解を示していた。7月会合後には、日銀の追加利上げ観測に米経済の後退懸念も重なり、株価が過去最大の下落幅を記録するなど金融市場が一時大きく不安定化した。

植田総裁の提出資料の報道を受けて、東京外国為替市場では円が対ドルで上げ幅を拡大し、一時前日比0.6%高の1ドル=146円ちょうどを付けた。

大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、植田総裁の発言に「アルゴリズムが円買いで反応したように見えるが、発言自体に目新しさはない」と指摘。円の対ドル相場は昨夜の海外市場から大きな「行って来い」になっており、「欧州時間では円ショート方がポジション調整を進める可能性もある」という。

一方、諮問会議では民間議員らが経済政策について提言。「政府・日銀が連携し、市場と丁寧に対話しながら、安定的なマクロ経済運営に万全を期すべきだ」とした。2025年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化に向けては、取り組みの進捗を後戻りさせることなく、債務残高対国内総生産(GDP比)の安定的な引き下げを目指すよう求めた。

今回の諮問会議は岸田文雄政権下で最後の開催となる公算が大きく、これまでの経済動向に関する総括を行った。

--取材協力:日高正裕.

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