(ブルームバーグ):30日の日本市場では、株式が上昇。経済統計の堅調で米国景気に対する楽観的な見方が広がったほか、年金基金やインデックスファンドなどパッシブ投資家による月末の持ち高調整が入り、売買が膨らんだ。電機や機械、自動車など輸出関連株のほか、商社や海運、非鉄金属など資源関連株も高い。

8月相場は米景気への警戒感などから日経平均株価は最初の3営業日で20%も下げる波乱の幕開けとなったが、投資家の恐怖心理も次第に落ち着き、月間下落率は1.2%にまで持ち直した。

債券相場は小幅安で、長期金利は一時約3週間ぶりの高水準を付けた。米金利が上昇した流れに加え、朝方発表された8月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)が市場予想からやや上振れたことで売りが先行。ただ、午後は下げ渋り、先物は引け際にプラスに転じる場面もあった。円相場は対ドルで144円台後半から145円付近で膠着(こうちゃく)感が強かった。

米国で29日に発表された4-6月(第2四半期)の実質国内総生産(GDP)改定値は、個人消費の上方修正などを要因に前期比年率3%増と速報値の2.8%増から上振れ。先週の新規失業保険申請件数は前週比0.2万件減り、23.1万件と市場予想の中央値をやや下回った。堅調な統計を材料に同日の米10年債利回りは上昇し、ニューヨーク原油先物は1.9%高と反発した。

みずほ証券の倉持靖彦マーケットストラテジストは、米経済は減速しているものの、「ソフトランディング(軟着陸)は可能とみられる」とし、日本株にとってはフォローの要因だと述べた。

株式

東京株式相場は上昇。米景気に対する楽観的な見方から電機や機械、自動車など輸出関連、商社や海運、非鉄金属など資源関連株が高い。非鉄については、東京電力ホールディングスが送電網増強に4700億円を投資するとの日本経済新聞の報道を受け、電線需要の拡大期待からフジクラなどが上げた。

東証業種別33指数は25業種が上昇し、上昇率1位は非鉄、下落率1位は精密機器。売買代金上位ではディスコやトヨタ自動車、日立製作所、商船三井などが高い半面、株主7社の保有株を海外で売り出すテルモは需給悪化懸念で下げた。CPIの上昇や小売業販売額統計の低調でニトリホールディングスやイオンも軟調。

この日は大引け時にMSCI指数の定期銘柄入れ替えに伴うリバランス需要が発生したため、東証プライム市場の売買代金は5兆1924億円と前日から35%増加。9日以来、3週ぶりの高水準に膨らんだ。

フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドは、米エヌビディアの決算など一通りのリスク要因を通過した中、月末で年金基金などの持ち分調整に伴う買いも引き続き入っているのだろうと指摘し、相場の押し上げ効果はあると述べた。

債券

債券相場は小幅安。長期金利は一時約3週間ぶりの高水準を付けた。米国でGDPの上方修正や国債入札の低調を受けて長期金利が上昇した流れを引き継いだ。8月の東京都区部CPIが予想からやや上振れたことも、日本銀行の追加利上げ観測を後押しする形で売りにつながった。

岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、今週は日銀の氷見野良三副総裁の発言で追加利上げ観測の高まりから利回りが少し上昇してきていると指摘。東京CPIの上振れを警戒する市場参加者がいた半面、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは2%を下回り、大きく振れる材料でもなく、来週の米雇用統計を前に「様子見ムードが強い」と話していた。

新発国債利回り(午後3時時点)

外国為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=145円付近と前日比ほぼ横ばい圏。日米金融政策の方向性の違いを背景としたドル売り・円買いが下支えしたほか、月末で輸出企業の円買いが強まる場面もあった。ただ、市場の関心が来週の米雇用統計に向かう中、需給中心で方向感を欠いた。

スタンダードチャータード銀行の江沢福紘フィナンシャルマーケッツ本部長は、前日の海外市場で145円台半ばまで円安が進んだことで「上半期末に向け、輸出企業からはドル売り・円買いの関心も出てきやすい」と指摘。加えて、日米金融政策の違いも円相場を支える要因になると述べた。

もっとも、8月最終取引日で仲値以外でもロンドン市場やニューヨーク市場でポートフォリオのリバランスの動きが出やすく、相場は上下に振らされやすかったと言う。

--取材協力:長谷川敏郎、山中英典.

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