(ブルームバーグ):原油価格は急上昇するリスクが高まっていると、ベテラン商品アナリストのジェフ・カリー氏は指摘した。今月に入り株式相場を動揺させた円「キャリートレード」の巻き戻しのような反転現象が原油相場にも起こるとの見方を示した。
高金利を背景に、ヘッジファンドや現物石油のプレーヤーはこれまでに先物ポジションや原油在庫を最大1000億ドル(約14兆4000億円)相当削減し、米短期金融市場を選好していたと、米投資会社カーライル・グループでエナジー・パスウェイズ担当最高戦略責任者を務めるカリー氏は述べた。
しかし米金融当局が金利を引き下げるのに伴い、原油の妙味は高まり、資金を呼び戻すはずだと、同氏は分析。深刻な原油供給の混乱が起きれば、この動きを急速に増幅させる可能性もある。
「利下げに伴い、在庫を保有するコストが下がるにつれ、物理的にも資金的にも、より多くが原油市場に戻ってくるだろう」とカリー氏はインタビューで発言。「価格に下落圧力をかけていた力学が逆転するはずだ。他の条件が同じであれば、原油価格は上昇するだろう」と述べた。
国際原油先物は7月上旬の1バレル=90ドル近辺から9%近く下落。世界の在庫は急速な減少が続いているものの、中国の需要見通し悪化を巡る懸念が強まっていることが背景にある。
需給ファンダメンタルズの逼迫(ひっぱく)と価格低迷というこうした不一致は、つまるところキャリートレードによって説明できるとカリー氏は語る。投資資金がコモディティーからキャリー取引におびき寄せられていたという。同氏は自身が社外取締役を務めるコンサルタント会社エナジー・アスペクツが公表したリポートで、この見通しを最初に詳述した。
カリー氏は米ゴールドマン・サックス・グループで30年近くにわたってコモディティー調査を率い、大胆かつしばしば強気な予想で知られるようになった。ゴールドマンは今週、北海ブレント先物の2025年価格予想を1バレル=80ドル未満に引き下げた。原油に対するウォール街の見通しは暗くなっている。
より安全な米国のマネーマーケットが提供する5.25%の利回りに対抗するには、原油投資でおよそ15%の利回りが得られる必要があると、カリー氏は見積もっている。米マネーマーケットには過去2年間に1兆5000億ドルの資金が集まった。
金利とリスク
米金融当局が政策を転換するのに伴い、こうした状況は変わる可能性がある。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は23日、主要政策金利を引き下げる時が来たと述べ、当局が9月に利下げを開始するとの見通しを裏付けた。
リビア東部政府は今週、すべての石油生産と輸出を停止すると発表した。中央銀行の総裁人事を巡る西部政府との対立が、同国経済の屋台骨である石油に波及した。
投資家は価格下落に賭けているため、価格の急騰に脆弱(ぜいじゃく)な状況だと、カリー氏は指摘。
「市場はかなりのショートになっている」とし、「仮に明日ショートカバーが必要となる状況が起きれば、例えばリビア情勢が悪化する場合、キャリートレードの巻き戻しは膨大なものとなり得る」と続けた。
原題:Carlyle’s Currie Sees Risk of Oil Spike After ‘Carry Trade’(抜粋)
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