(ブルームバーグ):26日の米国株式市場では、S&P500種株価指数がハイテク大手主導で反落。市場は数日後に発表されるエヌビディア決算に注目している。
ブルームバーグが算出する「マグニフィセント・セブン」に関する指標は1.2%下落した。半面、S&P500種の均等加重バージョンであるS&P500イコールウエート指数は最高値近辺。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が前週末23日に近く利下げに踏み切る意向を示唆したことで、強気相場の勢いがハイテク大手から他の銘柄にも波及するとの期待が支援した。一方、ダウ工業株30種は終値で最高値を更新した。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のオースン・クウォン氏は「パウエル議長はジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)で9月利下げを実質的に予告した。そのため裾野の広がりとローテーションという当社のテーマに変化はない」と指摘。「だが、S&P500種のリターンを一貫してけん引してきたエヌビディアの決算を見逃すことはできない。失望を招く内容となれば市場にとって依然としてリスクとなる」と述べた。
ゴールドマン・サックス・グループのスコット・ルブナー氏はS&P500種が今週、企業の自社株買いとシステマティックファンドやリテール投資家からの強いフローに押し上げられて過去最高値を更新し、市場ではFOMO(取り残される不安)が広がるだろうと予想している。
米金融当局者の発言にも引き続き注目が集まった。米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、利下げ開始が適切になったとの考えを表明。一方、米リッチモンド連銀のバーキン総裁はインフレには依然として上振れリスクがあるとみているが、労働市場が冷え込みつつあるため、金利を「下げる調整」は支持すると述べた。
S&P500種は薄商いの中で5615近辺に下落した。ハイテク企業が中心のナスダック100指数は1%値下がり。中小型株で構成されるラッセル2000指数はほぼ変わらずで終えた。
パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「パウエルFRB議長のハト派発言は、インフレ率が鈍化傾向にあり、米利下げの開始が近いとのシナリオを後押ししており、中小型株を支えている」と指摘。「中小型株への裾野の広がりは、年内の見通しが明るいことを示唆している」と述べた。
ネーションワイドの投資調査責任者マーク・ハケット氏は、市場はここ数週間、以前より健全な軌道にあり、ハイテク大手への過度の依存から脱却しつつあると指摘した。とはいえ、足元では「一服商状」と呼ぶにふさわしい状況にあるという。
「9月は歴史的に最悪の月であるため、とりわけ個人消費支出(PCE)価格指数やエヌビディア決算、雇用統計といった重要データが期待外れの内容となった場合には一定のボラティリティーが予想される」と同氏は指摘。「だが、逆風に見舞われるリスクがあるとしても、米利下げが始まり、企業による自社株買いが継続すると見られる中で、特に選挙イヤーでもある今年は、10-12月(第4四半期)に持ち直すと見込むのが妥当だろう」と述べた。
グレンミードのジェーソン・プライド、マイケル・レイノルズ両氏によると、28日のエヌビディア5-7月(第2四半期)で決算が出そろう「マグニフィセント・セブン」は、四半期利益が前年比34%増となる見通しだ。残るS&P500種構成銘柄では6%増となるという。
マグニフィセント・セブンはここ約1年、40%以上の増益を記録する一方、S&P500種の他の構成銘柄は減益となっていた。
両氏は「下期には一段と広範なファンダメンタルズ改善のプロセスが始まる可能性が高い」と指摘。「増益を確保する企業が増えれば、小型株に加え、市場の一極集中に伴う危険の回避を狙った投資プロセスに有利に働くはずだ」と述べた。
米国債
米国債相場は小幅安。供給拡大の見通しが重しとなった。
今週は27日の2年債(発行額690億ドル)入札に始まり、28日には5年債(同700億ドル)、29日には7年債(同440億ドル)入札がそれぞれ予定されている。
さらに9月初旬は通常、社債の起債が集中する。米国のレーバーデー(今年は9月2日)の連休明けの週は例年、起債が活況となる傾向にある。
為替
外国為替市場では、中東情勢の緊迫化を背景にドルに逃避買いが集まった。また原油が大幅高となったことが追い風となり、主要10通貨の中ではカナダ・ドルがアウトパフォームした。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.3%上昇。前営業日は1%近く下げていた。
ドルは対円では143円台後半から144円台後半でもみ合い。円は東京時間に一時、8月5日以来の高値となる143円45銭まで買われていた。
マネックス証券のアナリストは「中東での緊張増大に伴い、市場はさらに慎重姿勢を強めており、安全資産に資金が流入する要因となっている」とリポートで指摘。「9月の0.50ポイント米利下げを見込んだ取引が増えているが、そのような大幅利下げは米経済のハードランディング(硬着陸)を示唆する可能性がある」と続けた。
BNYメロンの外国為替・マクロストラテジスト、ジョン・ベリス氏は、9月6日発表の雇用統計が25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)あるいは50bpの利下げになるのかを決定づけるだろうと話す。
「当社は現時点で25bpの利下げとなる可能性が大きいとみている」と同氏はリポートで指摘。その上で「足元の利回り曲線は今後12-15カ月でほぼ必然的にリセッション(景気後退)に陥るとの見方を織り込んでいるが、それが最も可能性の高いシナリオだとは確信していない」と続けた。
原油・金
ニューヨーク原油先物相場は3営業日続伸した。リビア東部政府はこの日、すべての石油生産と輸出を停止すると発表。イスラエルがレバノン南部の親イラン民兵組織ヒズボラの拠点を攻撃したことで紛争激化の懸念が高まった中東で、新たな不安材料が持ち上がった格好だ。
リビア東部政府、石油生産・輸出全面停止-中銀総裁人事で西部と対立
リビア東部政府当局は、フェイスブックに投稿した声明で全ての油田とターミナル、石油施設に対してフォースマジュール(不可抗力条項)を宣言。中央銀行の総裁人事を巡る西部政府との対立が、同国経済の屋台骨である石油に波及した。
UBSグループの調査アナリスト、ジョバンニ・スタウノボ氏は「これらは『現実に』供給が失われる可能性があるため、その状況が続く限り現物市場はタイト化するだろう」と指摘。混乱がいつまで続くかは「見極めるのが難しい部分だ」と語った。
リビアの先月の産油量は日量約115万バレル。フランチェスコ・マルトチャ氏らシティグループのアナリストは26日のリポートで、リビアの原油輸出減少で北海ブレント原油は一時的に1バレル=80ドル台半ばに押し上げられる可能性があるとの見方を示した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は前営業日比2.59ドル(3.5%)高の1バレル=77.42ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は3%上げて81.43ドル。
ニューヨーク金相場は続伸。パウエルFRB議長が9月利下げ開始の見通しを示したことが引き続き支援材料となった。金価格は23日、パウエル議長講演を受けて1%を超える上昇となっていた。金利の低下は、利子を生まない金にとっては追い風となる。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、前営業日比8.9ドル(0.35%)高の1オンス=2555.20ドルで取引を終えた。
原題:Nasdaq 100 Falls 1% as Nvidia Hit Before Earnings: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries End Quiet Session Slightly Cheaper With Supply Ahead
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