(ブルームバーグ):22日の米金融市場では国債利回りが上昇。株式相場は反落した。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は翌日の講演で、年内の積極的利下げを示唆することはないとの見方が広がった。
米国債相場は下落。利回りは年限が短めの国債を中心に、全ての年限で上昇した。S&P500種株価指数は朝方こそ上昇し、過去最高値に近づいていたが、失速した。
金利スワップ市場は年内に約1ポイントの利下げを織り込んでおり、パウエル議長が実際に大幅利下げに慎重な姿勢を示せば、市場の期待に冷や水を浴びせる格好になる。
インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トレス氏は「パウエル議長は金融政策の階段をゆっくり下りていくことを示唆するのか、エレベーターで地階まで高速で降りることを示唆するのか」とし、「エレベーターでなく階段を選ぶ可能性が高い」と述べた。
この日の米金融当局者発言では、カンザスシティー連銀のシュミッド総裁が、利下げ開始の決定を支持する前に経済データをさらに目にしたいとの考えを示した。
ボストン連銀のコリンズ総裁は、利下げは漸進的なペースで進めるべきだと指摘。フィラデルフィア連銀のハーカー総裁も同様の立場を示した。
英ケンブリッジ大学クイーンズカレッジ学長のモハメド・エラリアン氏はブルームバーグテレビジョンで、米金融当局による年内の利下げ見通しを市場は織り込み過ぎていると指摘。「現時点で市場はあまりに多くの利下げを織り込んでおり、問題だ」と述べた。
10年債利回りは一時7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇し、3.87%を付けた。S&P500種は5600を割り込んだ。大手ハイテク株の比重が高いナスダック100指数は1.7%下げた。
エヌビディアなど大手ハイテク株が総じて売られ、インテルは6.1%安で引けた。原油相場が上昇したことでエネルギー株は高い。フィットネス機器を手掛けるペロトン・インタラクティブは35%高と急伸。4-6月決算で、売上高と利益がともに市場予想を上回った。
スレートストーン・ウェルスのケニー・ポルカリ氏は「米当局が利下げをするかどうかではなく、年内にどの程度、何回引き下げるのかという議論をわれわれは行っている」と指摘。「私は25bpずつ、3回の利下げを予想している方だ。米経済は末期的な状態ではない。従って、そうであるような示唆をする必要はない」と述べた。
ウルフ・リサーチのクリス・セニェック氏も、パウエル議長が9月の利下げサイクル開始を示唆するとの見方を示した。ただ、市場の織り込みとは異なり、年内に1回当たり25bpを超える利下げ幅を議長が示唆するとは思わないと述べた。
CFRAのサム・ストーバル氏は、米金融当局は次の利下げサイクルを25bpという「より慎重なやり方」で始めると予想。「こうした『ゆっくりと引き下げる』アプローチには、当局の対応が後手に回っている訳でないというシグナルを送る意図がありそうだ。同時に、ミッション完了と結論づける前にインフレの残り火を完全に消したと確認する余地を当局に与える」と分析した。
米国債相場の下落には、特にカンザスシティー連銀総裁の発言が影響した。原油相場の反発も債券安につながった。
米利下げ前にさらなるデータ見てみたい-カンザスシティー連銀総裁
S&Pグローバルの米購買担当者指数(PMI)速報値はまちまちで、製造業が市場予想を下回った一方、サービス業と総合は予想を上回った。
外為
ニューヨーク外国為替市場では、ドルが他の主要10通貨の大半に対して上昇。円は対ドルで下落した。
ブルームバーグのドル指数は一時0.5%近く上昇した。
先週の米新規失業保険申請件数は小幅な増加にとどまり、労働市場の減速が緩やかなペースであることが示唆された。
円はドルに対して一時0.9%安の1ドル=146円53銭を付けた。23日にはパウエル議長講演のほか、日本銀行の植田和男総裁による衆参両院の閉会中審査での発言機会も控えており、商いは薄かった。
ネッド・デービス・リサーチのアレハンドラ・グリンダル氏とパトリック・エアーズ氏は「日銀はこの先、慎重に動くだろう」とリポートで指摘。「政策を正常化し、伝統的な金融政策手段を将来用いるための機会は、今を置いて他にはないようにみえる」と述べた。
ポンドは対ドルで一時0.3%高の1ポンド=1.3129ドルと、昨年7月14日以来の高値を付けた。S&Pグローバルが発表した英国の総合PMI速報値が4カ月ぶりの高水準となり、市場予想を上回ったことが手掛かり。ポンドはその後、下げに転じた。
原油・金
ニューヨーク原油先物相場は反発。最近の下落は行き過ぎていたことがテクニカル指標で示唆された。
米景気減速や2025年の需要見通しの弱さを巡る懸念から、原油は前日まで4営業日続落し、相対力指数(RSI)で売られ過ぎの領域に近づいていた。市場はパウエル議長講演に注目。同氏は経済状況に関して一段の詳細を示すとみられている。
米エネルギー情報局(EIA)が前日公表したデータでは、原油在庫は1月以来の水準に減少したことが示されていた。留出油とガソリンの在庫もそれぞれ減少した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は前日比1.08ドル(1.5%)高の1バレル=73.01ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は1.17ドル上げて77.22ドル。
金相場は続落し、スポット価格はオンス当たり2500ドルを下回った。ドルが上昇する中、売りが優勢になった。
MKS・PAMPの金属戦略責任者、ニッキー・シールズ氏は「ドルは下げ止まり、持ち直したようだ。金にとっては最近の追い風が取り除かれた」と指摘。チャートに基づくテクニカル分析では、金は2284ドルの水準を試していると付け加えた。ドル安は金にとって強材料とされる。
TDセキュリティーズの商品アナリスト、ダニエル・ガリ氏はマクロファンドのポジション動向に関連して、金の「短期的な見通しには著しいリスクがある」とリポートで指摘した。同ポジションは現在、新型コロナ禍の最悪期以来の高水準にあるという。
ジャクソンホール会合でのパウエル議長講演を控え、金は今週、最高値付近で狭いレンジでの値動きとなっている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時現在、前日比30.25ドル安の1オンス=2482.31ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は30.80ドル(1.2%)安の2516.70ドルで終えた。
原題:Wall Street Braces for ‘Reality Check’ From Powell: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Slide Amid Hawkish Fedspeak, Oil Rebound, Mixed Data
CORRECT: Dollar Climbs With Eyes on Jackson Hole: Inside G-10
Oil Rebounds From January Low as Technicals Hint Slump Overdone
Gold Tumbles Below $2,500 as Dollar Gains Ahead of Jackson Hole
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