20年前、ダイナミックに食を変えた。その頃、私は東京で放送作家をしており猛烈に忙しく、食は乱れ、不規則な生活を強いられていた。まだ若いから大丈夫と過信していたところもあったかもしれない。

 あまりの激務に体は悲鳴を上げ、検査入院することになった。心配した母から、食生活を変えてほしいと菜食の本が送られてきた。だが見るからに面倒そうで、作る気になれなかった。

 しかし、偶然にも本屋で手にした雑誌に、雑穀を使って肉や魚の味わいを作り出す菜食料理が掲載されていた。あまりにおいしそうで、料理の意欲がわき、食い意地もあって雑穀料理教室に通い出した。

 なんておいしいんだろう。体が喜んでいる-。初めて食べた時の感動を今も覚えている。

 雑穀料理との出会いが、その後の人生を大きく変えた。大好きな沖縄に移住し、那覇の中心部、庭と井戸がある素晴らしい場所に浮島ガーデンを開店。今も元気に活動できている。

 食の大切さに気づいてからは、沖縄の現状も気になった。かつて長寿県と言われた沖縄は、今や早世率が全国ワーストだ。

 食の力で沖縄を元気にしたい-。料理教室や健康講座、有機農家と消費者をつなぐ「まーさんマルシェ」や環境フェス「アースデイ」、食の映画祭「まーさん映画祭」など、住み始めて12年で取り組んだ活動は多岐にわたる。

 数年前からは雑穀の栽培にも力を入れ始めた。沖縄が長寿だったころ、人々は雑穀を食べていた。伝統食を取り戻すことが健康回復への近道だと思ったのだ。

 数百年も前から、沖縄では五穀豊穣(ほうじょう)を祈って、アワやキビといった雑穀を神にささげ、それらを食べて命をつないできた。しかし雑穀栽培はいまや風前のともしびである。

 人々の健康のためにも、食と祈りという沖縄の伝統文化を残してゆくためにも、かけがえのない雑穀を失ってはならない。これから半年、食から見える沖縄の今を伝えたい。

(浮島ガーデン店主)

次回は仲本和美氏(仲松ミート執行役員)です。

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