(ブルームバーグ):大気中から二酸化炭素(CO2)を回収する米国最大規模の施設が完成した。オクラホマ州シャイドラーのプラントは年間5000トンのCO2を大気中から回収できる機械を設置。回収したCO2は石油採掘に利用される。スタートアップ(新興企業)のハイムダルが13日に発表した。

共同創業者のマーカス・リマ最高経営責任者(CEO)によれば、同社の技術はCO2の回収コストを1トン当たり200ドル(約3万円)未満に抑えられることを実証済み。加熱した石灰岩を使って大気中のCO2を吸着させ、再加熱によって取り出すアプローチを取っている。

ハイムダルと競合する企業の多くは、回収したCO2を貯蔵するだけで、石油採掘に利用することには同意していない。昨年サンフランシスコ近くに商業規模としては初の直接空気回収(DAC)施設を開設したエアルーム・カーボン・テクノロジーズがそうだ。アイスランドにある世界最大のDACプロジェクトを推進するスイスのクライムワークスも、原油増進回収技術(EOR)には取り組んでいない。

オープンAIの最高経営責任者(CEO)、サム・アルトマン氏をはじめ、マーク・ベニオフ氏やYコンビネーター・マネジメントが支援するハイムダルの場合、着想が他社と異なる。同社は炭素の活用と貯蔵を手がけるキャプチャーポイントと手を組み、近くの油井から原油を噴出させるためにCO2を利用する。石油大手のオキシデンタル・ペトロリアムも原油増進回収技術(EOR)を利用する大規模なプラントを建設中だ。

ハイムダルのリマ氏は「当然ながら当社はEOR産業を強く支持している」と話す。「化石燃料産業が完全に消えるべきだとは考えていない」と述べた。

ハイムダルが競合他社と異なる点は別にもある。CO2を排出する天然ガスを使用することだ。リマ氏によれば、同社プラントの回収能力5000トンには操業に伴うCO2排出分が加味されていない。このプロセスで正確にどれだけのCO2が排出されているのかは、操業データを見ないと分からないが、大抵のキルンではCO2を「1トン回収するに当たり」約250キログラムを排出するエネルギー要件になっていると同氏は説明した。

世界は温室効果ガスの排出をできるだけ早く削減しなければならないが、化石燃料の使用減少がその最速の道であることは研究で証明されている。CO2回収は航空業など脱炭素が難しいセクターでこそ有益性を発揮できるというのが、科学者の一致した見方だ。記録的な排出量を減らして、気候変動による最悪の影響を限定するのに有効とみられている。この目標を目指す上で浮上したのがDACだが、有意な規模に達するには程遠い。

米国では初期段階のDAC企業を支える環境が整っている。インフレ抑制法(IRA)による税額控除に加え、米エネルギー省からの潤沢な資金援助がある。税額控除はCO2回収と貯蔵に対して高い比率で設定されているが、EORについては部分的にしか適用されない。

リマ氏によれば、ハイムダルはCO2を恒久的に地下に貯蔵する炭素隔離を検討する余地がある。しかしこのプロセスには隔離井の認可が必要であり、それには数年を要する可能性がある。ハイムダルはキルンの動力源を現行の天然ガスから電気に変える可能性も排除していない。リマ氏はただ、「最も安価な動力源」として天然ガスを選好していると述べた。

原題:Altman-Backed Startup Opens Largest US Carbon Removal Facility(抜粋)

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