らぁめん ほりうちの朝限定ラーメンは、590円と破格の価格設定(筆者撮影)この記事の画像を見る(13枚)喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するライター・ブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第73回となる今回、訪れたのは「らぁめん ほりうち」です。


さまざまな外食チェーンで提供している朝限定メニュー。カフェやハンバーガーショップ、おそば屋さんなどはもちろんのこと、最近では焼肉店やお寿司屋さんなどでも独自のモーニングサービスを展開しています。

今回ご紹介するのは、「らぁめん ほりうち」の「朝らぁめん」と「朝ぞうすい」です。昔懐かしいしょうゆラーメンと、ラーメンスープを使用したぞうすいを、朝からおいしくいただきました。

らぁめんほりうち新橋店限定メニュー、朝ラーメンと朝ぞうすい

「らぁめん ほりうち」は新宿・新橋に店舗を持つラーメン店。新宿の老舗「らぁめん 満来」の味を引き継ぎ、大きめサイズのチャーチューが人気の、「食べログ3.7」のお店です。

平日の朝は、新宿店は午前8時、新橋店は午前7時から営業をしていますが、「朝らぁめん」を販売しているのは、新橋店のみです。

(筆者撮影)

新橋店の朝メニューの販売時間は開店から午前11時までで、朝限定のメニューは2つ。

・朝らぁめん 税込590円
・朝ぞうすい 税込470円

朝らぁめんは大盛りなしとなっています。以前利用した際は、両メニューともに500円以内だったのですが、物価の高騰もあり少し値上がりしていました。

それにしても、ラーメンとしてはかなりお安い価格設定ではないでしょうか。麺の量は控えめではあるものの、レギュラーメニューの「らぁめん 並盛」税込790円と比較しても、「朝限定メニューだからこそ」のお得さがありました。

(筆者撮影)

実は意外と少ないチェーン店の朝ラー

数年前には「一風堂」や「幸楽苑」が朝限定メニューの販売をはじめ、全国的に朝ラー(朝ラーメンの略語・通称)が広まるのではと期待した時期もあったのですが、残念ながらいつの間にやら終了してしまいました。

朝ラーの聖地は静岡県旧志太郡や福島県喜多方市と言われていますが、東京でも朝から営業しているラーメン店はチラホラあり、朝から繁盛しているお店もあります。

ただ、朝限定のメニューをやっているお店となると、なかなか見つかりません。

らぁめん ほりうち、朝ぞうすい(左)と、朝らぁめん(筆者撮影)

新宿と新橋の2店舗しかない「らぁめんほりうちをチェーン店として紹介するべきか否か」というのは判断の別れるところではありますが、新宿と新橋は訪れる人も多いでしょうし、微力ながら都心の朝ラーを盛り上げるべく一筆とらせていただきました(というか、純粋にほりうちのファンで紹介したかったのです)。

ほりうちの朝らぁめんで古き良き昭和のラーメンを朝から堪能

透明度の高い醤油スープが魅力の、昔ながらのしょうゆラーメン(筆者撮影)

そんな貴重な朝限定のラーメンを販売している「らぁめん ほりうち」の新橋店。「朝らぁめん」は朝食にぴったりサイズの小さめの丼鉢に入って提供されました。

澄んだ茶色のスープには脂がきらめき、上にチャーシュー、メンマ、ほうれん草、海苔が載っています。

見た目からしてオーソドックスな昭和のラーメンです。最近のラーメンは繊細な盛り付けや個性的な味付けで、バリエーションが豊かになってきました。

でも、こういう古き良きしょうゆラーメンって、たまにものすごく食べたくなります。

鶏ガラと豚骨を使用した、醤油ベースの豚清湯スープ(筆者撮影)

スープは見た目通りのあっさり醤油味で、昔ながらのちょっとしょっぱめのやつ。でも、その塩気が食欲をそそるのです。

醤油の香りと香ばしさに、鶏ガラと豚骨をふんだんに使ったダブルスープが溶け込んで絶妙な味わいです。折り返し地点で調味料ブースに並んでいたお酢を追加しても、さっぱりしておいしい。

不動のスタメン、チャーシュー、メンマ、ほうれん草、海苔をトッピング(筆者撮影)

提供直前にカットするしっとりチャーシューが絶品

チャーシューは1枚だけですが、サイズも厚みも相当なもので塊感があります。厨房に蒸し器が置いてあり、提供直前に毎回チャーシューブロックを取り出して、包丁でカットして提供していました。

提供直前にカットしたばかりの、旨みの詰まった厚切りチャーシュー(筆者撮影)

直前まで蒸してあったので、しっとりとして脂っこくない。かむとぎゅっとした歯触りで、肉の密度が高く、凝縮された旨みが詰まっています。かみごたえもありつつも、口の中でほどける絶妙な仕上がり。

麺は中太で丸麺ではなく楕円形のひらべったい形状です。みずみずしいもっちりとした食感で、しっかりした食べごたえでした。

喉越しを楽しみながらすするというよりは、麺をしっかりかみしめて、小麦のうまみを味わいたいところ。麺の量はレギュラーメニューよりも少なめで、朝には丁度良いボリュームです。

丸麺と平打ち麺の中間ぐらいの中太麺は、食べ応えもあり腹持ちもよかったです(筆者撮影)

シャキシャキ食感や、磯の旨みをプラスしてくれる海苔、さっぱり口をリセットするほうれん草など、定番のトッピングが、箸休めとなり、飽きることなくぺろりと平らげました。

朝ぞうすいは、朝限定ならではの裏メニュー感がたまらない

「朝ぞうすい」は、ラーメンスープにごはんをドボンと落としたダイナミックな一品。具材は溶き卵とねぎのみの潔さです。

「ラーメンを食べた後に、残ったスープにごはんをドボン!」という食べ方を好む猛者ならわかると思いますが、ラーメンスープと米の相性は最高なのです。

ラーメンスープで作ったぞうすいには、普通のれんげと穴あきれんげがついてきました(筆者撮影)

税込470円という価格設定は、「朝らぁめん」の税込590円がお得すぎるため割高に感じるかもしれませんが、さにあらず。麺を食べずに一足飛びで、ラーメンスープでごはんを食す。まかない飯とか裏メニュー的な、背徳のおいしさをワンコイン以下で楽しめてしまうところがいいのです。

ラーメンスープがおいしいからこそ、シンプルでもうまい

朝ぞうすいの具材は、溶き卵と青ねぎのみ。そっけないほどシンプルですがこれがうまい(筆者撮影)

食べる前は「ラーメンのスープをぞうすいにしたら塩辛すぎるんじゃないか?」と、ちょっと不安に思っていたのですが、心配ご無用。

溶き卵とごはんのでんぷん質が、ラーメンの塩気をまろやかにしてくれて、スープがやさしい表情に。最後の一口まで飲み干せるスープに変身するのです。

もともとのほりうちのラーメンスープがおいしいので、スープとごはんだけでも、もちろんおいしい。

れんげですくって、ごはんと一緒にすする。溶き卵がとろけてトゥルンとした喉越しや、青ネギのピリリとした辛味が程よいアクセントになり、あっという間に完食です。

朝7時からサラリーマンでにぎわう平日店内

新橋はオフィス街で、土日は閑散としているため、「らぁめん ほりうち」の朝メニューも平日のみの販売です。平日の朝7時すぎ。

店に入ると厨房をぐるりと囲むように配置された、15席ほどのカウンター席は1席とびにすべて埋まっていました。

卓上の調味料たち。個人的には折り返し地点で、スープにお酢を入れて味変するのがお気に入り(筆者撮影)

座っているのはすべて男性で、年齢層は20代から60代までさまざま。半分以上の人がスーツ姿です。「私服通勤や、オフィスカジュアルが広まりをみせても、やはり営業職はスーツなのだな」と、改めて気付かされます。

昭和のラーメン店さながらの店内には、とんこつのちょっと臭いけどたまらなく食欲をそそる香りが漂い、厨房では大きなずんどう鍋からゆげがもくもく、調理場にはざるにゆで上がったほうれん草がてんこもりに積み上げられています。

BGMはジャズでもなければ歌謡曲でもなく、ラジオのAMチャンネル(今はFM放送ですが)から、おじさんDJのおしゃべりが流れています。

朝7時のラーメンが、戦う男たちの朝の胃袋を満たす(筆者撮影)

カウンター席は脅威の回転率で、1人入店すると1人が出て行き、2人入店すると3人が出ていく。つねにカウンターの半分が埋まっている状態ではあるものの、行列はできません。

全員が黙々と平らげて、入店から10分たらずで出ていく。肩で風を切ってのれんをくぐる戦う男たちの後ろ姿を見送りながら、ラーメンをすする朝です。

編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。画像をクリックすると本連載の過去記事にジャンプします

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