(ブルームバーグ):日本銀行の利上げを受け、2日の東証株価指数(TOPIX)下落率は約8年ぶりの大きさになった。大幅安の混乱にもかかわらず、一部の投資家は依然として日本株の長期的見通しに期待を示している。

日銀が7月31日に政策金利を0.25%程度に引き上げると決定したことで、市場にはボラティリティー(変動率)の波が押し寄せた。TOPIXは同日に1.45%上昇したものの、8月1日と2日には急落した。

日銀の動きは、米金融当局が利下げを示唆したことも相まって、円相場を押し上げた。円安は日本の輸出企業の株価を支える大きな要因だった。しかし、恒生投資管理(ハンセン・インベストメント・マネジメント)やゴールドマン・サックス・グループ、ティー・ロウ・プライス・グループなどの投資家やアナリストによれば、長年のマイナス金利を経て日本の金融政策が正常化するのに伴い、企業の価格決定力と賃上げが経済成長を促進し、相場を下支えすることが見込まれるという。

恒生投資管理のディレクター兼最高投資責任者(CIO)のウィルフレッド・シット氏は「長期の基調的なファンダメンタルズは依然として良好だ」とし、「来年に向けて、日本経済はさらに緩やかな回復の兆しを示す可能性がある」と指摘した。

金融株が最大の打撃を受けた。同セクターは7月31日の利上げ後に値上がりし、東証33業種の銀行業指数は4.7%高となったが、2日には11%安と急落した。三菱UFJフィナンシャル・グループは、1日に発表した4-6月期(第1四半期)の純利益がアナリスト予想を上回ったにもかかわらず、2日に12%下落。同様に、みずほフィナンシャルグループも利益が市場予想を上回ったものの、11%下げた。利益が市場予想を下回った大和証券グループ本社の株価は19%下落した。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の伴英康アナリストは「持続的なコレクションにつながるかというと、そこまではまだ言えない」とし、「ファンダメンタルズの悪化に対する懸念が出てきたというよりは、マーケット全体のセンチメントの悪化に引っ張られたという要素が強いという感じがする」と分析した。

年初来では保険・銀行株はパフォーマンス上位となっており、同セクターの株価指数は市場全体のパフォーマンスを上回っている。

ティー・ロウ・プライスで新興国市場および日本株のポートフォリオ・スペシャリストを務めるダニエル・ハーリー氏は、銀行を中心に保険会社も含め「金融株にとって金利上昇は支援材料となる。われわれは金融株のポジションをオーバーウエートとしている」と述べた。

輸出企業は円安から最も恩恵を受けており、相場が反転すれば最も大きな打撃を受ける可能性がある。日銀が利上げを決定し米金融当局が利下げを示唆したことで、円相場は一時1ドル=149円を超える円高水準に上昇した。日銀が追加利上げすれば日米金利差の縮小につながり、円相場をさらに押し上げる可能性がある。

岡三証券の大下莉奈シニアストラテジストは、多くの企業の想定為替レートは現在の水準よりも円高に設定されているため、大きく業績が悪化する可能性は低いと指摘。「稼ぐ力を持つ企業に関しては、意外とここの下がったところが中長期で見ると買い場だったという見方にはなるかと思う」と述べた。

トヨタ自動車の株価は2日に約4%下落。前日は約8%下げていた。ホンダも3.4%値下がりした。国内有数の企業の株価が下落したことで、売りが海外から出ているとの観測が高まった。日本取引所グループのデータによると、かつて日本株上昇のけん引役だった海外投資家は、7月第4週(22-26日)に日本株市場で現物と先物を合わせて約1兆5600億円を売り越した。

一方、大手製造業とは対照的に、丸紅などの商社は日銀の利上げ決定について、景気改善を示唆しているため、国内事業にとってプラスとの考えを示している。

ゴールドマンの建部和礼ストラテジストは、国内経済の改善は日本株上昇のための重要な材料だと引き続き考えており、中期的には建設的な見方を維持していると指摘。一方で、日本株をグローバルな展開から切り離すことはできないため、投資家の米リセッション(景気後退)懸念の後退や円上昇の緩和が必要だと考えており、短期的には慎重な姿勢を維持しているとしている。

原題:Investors Take Long-Term View as Rate Hike Whipsaws Japan(抜粋)

--取材協力:中道敬間一生清原真里.

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